リーマンの買収後、いかに部下のやる気を保ったか

動かす組織がいかに大きくなっても、その基盤は個別のコミュニケーションです。リーマン・ブラザーズの人員を承継したときも、そう痛感しました。

当時、私がIB(投資銀行)部門の専務となった頃です。組織の融合に当たって、ある先輩から昔「やりすぎるなよ」と言われたことを思い出しました。要するに、野村のカルチャーを相手に押し付けすぎるなということでした。

リーマン・ブラザーズの欧州、アジア部門が加わりましたが、野村を優先することなく、公平に、優秀な人材をポジションに付けました。実際、海外拠点ではリーマン側にも優秀な人材が多く、彼らが多くのポジションを獲得しました。当時の給料は、元リーマン社員のほうが高い。それなのに「野村のカルチャーを押し付けるな」では、前からいた社員のモチベーションが下がります。

そのときは、ひたすら部下一人ひとりと、向き合うようにしました。IBの社員はお客さまを訪問する際に上席にブリーフィングする「外交メモ」をいつも作成しますが、それに赤ペンで気が付いたことを書き入れ、部下と会話していました。それがうれしかったと言ってくれた部下もいたようです。