自らの行動でいい評判を作り出す方法
つい最近、面白い話を聞いた。その女性担当者には、取引先を接待した経費の書類が回ってくる。法人の場合は、料亭での会食が中心で、役員または部長クラス、課長クラス、担当者クラスの3人を招いて、自社の3人の社員が応対することが多いそうだ。
年間ではかなりの数の接待交際費の精算を扱う。具体的には、料亭での飲食費、相手に渡す手土産代、それに帰りのタクシー代になる。タクシーチケットは、相手方の参加者に一人一枚ずつ渡している。
そして接待が終了した後に、タクシー会社から彼女のところに乗車した分の精算書類が送られてくる。それを見て彼女は気づいたことがあるという。
相手方企業の役員・部長クラスの出席者は、会食の会場からほど近い地下鉄や私鉄、JRの駅までタクシーに乗っていることが多い。当然精算するタクシー代も安くつく。一方で担当者クラスは、距離のある自宅まで乗車しているのだそうだ。
それを見た彼女は、「やはり会社の中で、出世していく人は自らを律している。それにひきかえ若い社員ほど会社にもたれかかっているから将来がないのよ」と私に話してくれた。それに対して私は少し違うのではないかと感じた。
むしろ役員・部長クラスの出席者が最寄りの駅までしかタクシーを使わないのは、相手企業の担当者(この場合は彼女)が、精算したときに「あの会社の役員さんは、最寄り駅までしかタクシーを使っていません」という話が、会食を一緒にした相手方の部長に伝わることを期待しているからではないだろうか。相手方からいい評判をとるためである。「そこまで見通せているから彼らは社内で出世するのではないか」と彼女に話した。自らの嗜好や行動の傾向を知られることを逆にうまく利用していると思ったのである。
経理担当者の中には、「人事部の評価とは異なる人間性が書類から見えてくる」という人もいる。それを他人に気づかれず八方美人的にうまくやっている姿を見ると、「彼には違う面があるのだ」と指摘したい気持ちになることがあるそうだ。
そうだとすれば、書類を通じて見られることを逆手にとって、経費の綺麗な使い方をすることによって自らの評判を高めることも一つの戦術であると思うのだ。