近頃は節税本が数多く出版され、元国税調査官が著したベストセラーもあります。しかし、税理士の立場からいうと、内容には誤りや古い情報も混じっています。
企業に掛かる税金の金額は、その企業の益金(収益)から損金(費用)を引いて算出します。益金を正しく申告したうえで税額を減らすには、損金を増やせばいい。だから、どこまで損金として認められるかが節税の焦点となります。
社長が社用車として乗る“中古のベンツ”も節税対策の一つ。本来、クルマは6年かけて減価償却により損金にするのが税法上の決まりですが、4年落ちのクルマは、期首に購入したのであれば、その年に購入代金のほぼ全額を損金にすることができるのです。
サラリーマンにとっての節税とは、税金がかからず会社から利益を得ること。その代表例が、大手企業がよく活用するフリンジベネフィット(給与外給付)=福利厚生です。例えば、借り上げ社宅。従業員が賃貸契約をし、会社から家賃の一部補助として住宅手当をもらう場合、その金額は給与として所得税・住民税が課税されてしまいます。一方で会社が社宅として借り上げた場合、会社が支払う家賃の1割程度を従業員が負担することで、実際の家賃との差額だけ会社から補助を受けているのと変わらないのに、その金額には税金が課されないのです。同じ福利厚生による節税の例としては、一定額までの昼食代の補助や社員食堂の利用などが挙げられます。
サラリーマンの使う経費の可否について、よくキャバクラが話題になりますが、これはあくまで事実関係が問題です。本当に仕事で使ったのであれば、まず税務上問題になることはありません。むしろ気を付けるべきは会社の内規のほうでしょう。事実と違う報告をした時点で、それは横領です。社員に鷹揚に経費を使わせておいて、リストラの際に解雇のネタとして使う会社は実際にあるので、注意が必要です。