富士フイルムHDの生き残り戦略を学べ

企業経営でも、会社が大きく変わらなければならないときに、コストを下げて価格を上げて売り上げを伸ばそうなどと言っている社長は即クビである。国家が大きな岐路に立っているときに、コストを1割下げてこういう成長戦略で日本を元気にしましょうなどというリーダーもまったくありえない。選択と集中とか、第三次事業仕分けなどと言っているが、そんなものでは国の体質は絶対に変わらない。

会社が大きく変わるときというのは、次の2つの選択肢をとるしかないのだ。

一つは、今までにやってきたことをやめて新しいことをやる。たとえばコア事業の突然死に直面した富士フイルムホールディングスは、化粧品や医薬、事務機、液晶事業などに思い切った事業転換をして生き残りを図っている。キリンホールディングスにしても、国内需要は頭打ちということで、アジアで積極的なM&Aを展開、今では事業構造が大きく変わった。

もう一つのやり方が、ゼロベースの改革。「今、会社が生まれたとしたら……」という発想でゼロからつくり上げる。日本という国が今生まれたとしたら統治機構はどうするのか、日本の使命やミッションは何かといったことをゼロベースで議論し、「こういう国を目指す」と定義する。そのうえで何にどれくらいのコストが必要かを算出して積み上げていくのだ。会社組織の場合、ゼロベースの改革でコストが3分の1になるケースも稀ではない。

事業仕分けが物語るように、日本のコスト、すなわち歳出を削れたとしても一.2%がせいぜいだ。しかし、今の債務状況を考えれば、日本株式会社としては歳出を半分にしないと生きていけない。

歳出を半分にしてどうなるかといえば、日本はようやくプライマリー・バランス(基礎的財政収支=国債発行収入などの借金を除いた歳入と国債の利払いと償還費を除いた歳出の収支)の均衡が取れる。

ただし、プライマリー・バランスというのは、これ以上累積債務が膨らまないという数字であって、目下の借金900兆円が減るわけではない。