完全に矛盾する「農地法改正」発言

2011年、日本では前年同様「TPP」(環太平洋戦略的経済連携協定)参加を巡る議論が騒がしくなるだろう。その発端は周知のとおり、菅直人首相が先の臨時国会冒頭の所信表明演説で

「TPP交渉などへの参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指す」と表明したことだ。

TPPは環太平洋地域で自由貿易圏をつくろうという経済連携協定。06年にチリ、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイの4カ国でスタートした。当初は小国ばかりだったが、現在はアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの5カ国が参加の意思を表明して交渉を開始、カナダ、メキシコ、韓国なども参加を検討している。

10年11月には参加国と参加表明国9カ国による拡大交渉会合を開催、11年早々から関税撤廃などの協議を始めて、11月のAPEC(アジア太平洋経済協力)での協定妥結を目指して交渉を本格化するという。

日本は参加が遅れるほどTPPのルールづくりでおいてけぼりを食らうことになる。現に日本は先の9カ国会議にオブザーバーとして参加することを拒否されているのだ。菅政権が本気でTPP参加を目指すのなら、早急に国内論議を深めなければならない。だがリーダーシップは発揮されることなく、唐突に打ち出してはトーンダウンするお決まりのパターンで与党内の議論すらまとまらなかった。

本気どころか菅首相は何もわかっていないと私が感じたのは、所信表明演説からわずか2週間後に、「若い人でも障壁なく農業に参加できるように法体系も見直す必要がある」という趣旨の見解を示したことだ。

冗談は休み休み言ってほしい。農地法を改正して若者を農業に参入させたその先に何が待っているのか。自ら「参加を検討」と公言したTPPである。TPPを一言で言うならば、“例外なき自由化”。すべての物品の関税を廃止することが原則なのだ。農作物も例外ではない。