BRICsと同等!?インドネシアの成長力
アメリカ発金融危機に端を発して世界的な経済危機に見舞われた2009年。不況から脱せない先進国を尻目に、ぐっと存在感を増したのが巨大な人口を抱えた新興国だ。BRICs諸国ではロシアの経済回復が立ち遅れているが、中国、インド、ブラジルは世界的な経済危機の影響からいち早く立ち直って、再び成長軌道に戻った。
また最近、BRICsにもう一つ「I」を加えて「BRIICs」と呼ぶべきと私が提唱しているのが、人口2億4000万人を擁するインドネシア。7月の大統領選で再選、2期目に入ったユドヨノ政権下の経済は絶好調だ。
同国ではスリ・ムルヤニ財務大臣が、華僑などが地下や海外に隠しているアングラマネーを申告した場合、過去の脱税は不問に付すという政策を取ったおかげで、地下経済が一気に表に浮上し、税収が2倍に増えた。税制改革その他の大胆な施策によって、1968年から30年に及んだスハルト政権の独裁以来、腐敗、癒着、縁故主義がはびこっていたインドネシア経済は徐々に健全さを取り戻し、再び成長を加速させているのだ。
今年9月、日本人経営者約50人を引率してインドネシアを訪問し、現地企業を数社見学した。どの会社も年率50%以上と成長著しく、ゼロ成長やマイナス成長にすっかり慣らされた日本の経営者たちは「こんな国があるのか」と一様に目を丸くしていた。
私はBRIICsの国々を30~40年見てきているが、まったく様変わりした。かつては「ブラジルは資源にも恵まれているし人材は優秀。悪いのは政府だけ」「インド人は世界中で活躍しているんだから、もっとできるはず」と私が演説をぶっても、どこの国の経営者もシュンとして「そうは言っても大前さん、この国は……」と、自分の国の悪口が止まらなかった。
私はマレーシアの経済アドバイザーを18年務めたが、インドネシアに行くたびにこう羨ましがられたものだ。
「この国は1万8000も島がある。言語だけで500、種族だけで300もあってまとまりが悪い。とてもマハティール首相(当時)の下で一糸乱れずにやっているお隣のマレーシアのようにはいかない」
それが今や自信満々で、自国の悪口を言う経営者などまったく見当たらない。私が下手に鼓舞する演説など打とうものなら暴走して危ないんじゃないかと思うほど、熱気に溢れているのだ。