企業経営の実態を無視した過度に厳しい基準は、経済活動に多大な支障をもたらす。日本版SOX法といわれて鳴り物入りでスタートした金融商品取引法だが、その施行により日本の未来を担う「起業」を著しく困難な状況とさせた。それが意味することとは――。
なぜ、わずか1年で起業が激減したのか
国内の起業数が激減している。
IPO(新規株式公開)市場といえば経済の活況度と成長性を占う重要な指標の一つだが、2008年の日本のIPO社数は全市場合計で年間49社と、前年の121社から劇的に減少した(別図参照)。IPO社数は例年年間100社以上を数え、ピークの00年には200社を超えていた。それが今や4分の1以下、過去20年でバブル崩壊後の1992年の27社に次ぐ低水準となった。
なぜIPOが激減したのか。世界的な景気後退による相場の低迷や企業業績の下振れなど、もっともらしい理由はいくつか挙げられる。だが、IPOが敬遠されるようになった心理的要因は、また別のところにある。
実はIPOはアメリカでも激減している。理由は明白だ。エンロンとワールドコムという2つの巨額不正会計事件を受け、02年に内部統制や財務ディスクロージャーの徹底を目的としたサーベンス・オクスリー法(SOX法)が成立したからである。