節電では済まなくなる過剰なアレルギー反応日本全国17カ所に計54基ある原子力発電所は、13カ月に一度、定期検査のために原子炉を停止しなければならない。これは電気事業法に基づき義務づけられたもので、定期検査をクリアすれば再稼働は可能になる。しかし福島第一原発の事故以降、定期検査を終えても周辺住民や自治体の反対にあって、電力会社は再稼働できない事態が相次いでいる。
報道によれば、たとえば九州電力の玄海原子力発電所の二号機は3月に、三号機は4月に再稼働を予定していたが、現在も停止したまま。同じく4月に再稼働を予定していた関西電力の高浜原発一号機、美浜原発一号機、北陸電力の志賀原発一号機も停止中だ。
6月には東通一号機(東北電力)、志賀(北陸電力)二号機、7~8月には伊万三号機(四国電力)、大飯三号機(関西電力)、泊一号機(北海道電力)などが再稼働を予定している。しかし、福島の原発事故が収束しない以上、立ち上がる見込みは乏しい。
このままでいけば最大13カ月後の来春には、すべての原発は停止に追い込まれることになる。つまり1年後には、東京電力管内のみならず、日本全体で3割近くの電力が失われるのだ。
国民生活に多大な影響が出てくるのはもちろん、日本の産業経済を揺るがす深刻な事態となる。生産拠点やデータセンターが被災した東日本から関西や九州に移すというリスク分散も効かなくなる。電力の約4割を原発に頼っている九州や関西などは特に厳しい。
原発・エネルギー政策を見直すにしても、いきなりすべての原発が止まったら日本はたちゆかなくなる。当面は定期検査が済んで安全性が確認された原発から順次再稼働していくしかない。政府もそれはわかっているはずだが、住民や世論の反対を恐れてか口をつぐんでいた。ようやく6月18日に海江田万里・経済産業相が原発の安全対策は完了したと宣言、26日には玄海原発のある佐賀県に経産省原子力安全・保安院が赴き、県民向け説明会を実施するなど、再稼働への地ならしを始めている。だが、全原発再稼働の見通しはいまだ不透明のままだ。
最大の問題は、誰が「安全だから原発を動かします」と説得するかである。