「背中をポンと押してやろう」
世界を回ってみると、世界的な不況でしょげているのはどこの国も一緒だが、活力のある国は若い世代が日本のように縮み上がっていない。
たとえば中国。今、中国には上場を志向している会社が6万社あるという。
マッキンゼーでアジア太平洋エリアの所長をしていたときのこと。優秀で使えそうな人材は、サンフランシスコやロサンゼルスの事務所に預けて2~3年修業させるのだが、大抵の中国人は修業から帰ってきて1年もすると「お世話になりました」と言い出した。
聞けば、親戚のおじさんと会社を興すとか、そんな話ばかり。「いろいろ教えてもらったので、もう大丈夫です」と、しれっと告げて去っていく。一人前のコンサルタントに育てるため、どれだけの金と時間をかけたのか、ぼったくりも甚だしいと当時は腹も立ったが、今にして思えば鶏口牛後の故事が染色体レベルに刻まれているのが中国人というものなのだろう。
こうした中国人のメンタリティがわかると、上場予備軍6万社という数字も理解できる。景気の良し悪しは関係ない。資本市場が整備されたら中国は爆発する可能性を秘めている。
ブラジルに行っても、ロシアに行っても、新興国では若者が皆起業を考えている。インドの熱気も物凄い。一発当ててやろうと虎視眈々の輩がウジャウジャいて、たとえば私がムンバイで講演をすると、衛星を使ってニューデリーやバンガロールなどの主要都市の会場にもライブ映像が流され、10万人規模の聴衆が集まってくる。