作業自体が無駄だった民主党の事業仕分け

仕分け人がテレビカメラを前にして官僚をこき下ろす――そんな場面が印象的だった民主党の事業仕分け。予算の無駄遣いにメスを入れ、予算編成のプロセスが“見える化”されたなどと評価する向きもあるが、まったくの不見識である。そもそも事業仕分け自体が無駄な作業であり、問題の本質を解決できるはずがなかったからだ。

事業仕分けがなぜダメなのか、企業経営の視点から考えてみたい。

たとえば、日本航空(JAL)のような会社はいくら少数精鋭にしたり、コストダウンしても将来性が期待できるような元気な会社にはならない。LCC(ローコストキャリア)と呼ばれる格安航空会社は、JALの半分の値段で飛行機を飛ばして利益を出している。どうしてこっちは赤字で、向こうは黒字なのか。

ありていに言えば、会社組織というのは年とともに垢やコレステロールが溜まっていくのである。たとえば小売業の場合、古い会社では販売管理費が26%ぐらいかかる。目に付いた無駄を削ったところで、21~22%がせいぜいだろう。しかし新しい会社が勢いよく伸びているとき、アメリカのウォルマートがシアーズを食っていった頃の販管費は13%にすぎない。「26対13」では勝負にならない。

会社に垢やコレステロールが溜まる理由については、「パーキンソンの法則」がよく知られている。「仕事量は与えられた時間を使い切るまで膨張する」というのが有名な第一法則だが、20世紀のイギリス歴史・政治学者であるパーキンソンは、「間接業務は目的とは関係なく人の数に比例して増える」と、組織が肥大化する法則性についても指摘している。

新しい会社は人手が少ないから、必要最低限のことしかやらないし、1人で3役も5役もこなさなければならない。会社が大きくなって人が増えると、仕事のやり方が機能ごとに細分化されていく。そのほうが仕事はルーチン化するので確実になるし、新しく入ってきた人も仕事を覚えやすいからだ。しかし組織が肥大化して機能が分化すれば、それぞれの管理業務や連結的な間接業務も必要になる。

このようにして組織は「大企業病」に侵されていく。そういう会社がコストダウンをするとどうなるか。昔のように1人5役の仕事ができる人材などいないのに、仕事の内容、定義を変えないまま各部門の人員をまずは均等に減らすから、現場の仕事は倍以上に忙しくなる。日本のビジネス社会で鬱病や自殺が急増しているのは、猛烈なリストラ旋風の中を生き残った社員に滅茶苦茶なしわ寄せがきているからだ。