法的紛争はしばしば不毛な消耗戦に突入してしまう。紛争解決コストを抑え、トラブルをチャンスに変えるためには、弁護士とどのようにつきあえばよいのか。

なぜ弁護士は「協力者」でなく
「問題の一部」になりがちなのか

交渉の世界には取引と紛争解決という2つの分野がある。そして、法律や弁護士がこの両方に関係があることを経営者は当然知っている。取引が不動産のリースであれ、企業買収であれ、特許の使用許諾であれ、販売契約であれ、企業は弁護士を雇って条件を検討・交渉させ、契約書を作成させる。そうした取引がこじれた場合には再び弁護士が登場する。紛争解決の分野では弁護士は益よりもむしろ害をなすと、経営者はぼやくものだ。紛争が解決されるのは、両当事者が巨額のカネを訴訟につぎ込んで、弁護士の懐を豊かにしてやった後のことが多いからだ。

スコット・ペペットとアンドルー・トゥルメロと私の共著『Beyond Winning : Negotiating to Create Value in Deals and Disputes(勝利を超えて:取引と紛争における価値を生み出す交渉・邦訳なし)』で、われわれは、弁護士とクライアントは紛争を取引に変えるチャンスを見逃すことが多いと指摘している。とりわけ法的紛争は3つの落とし穴にはまりやすい。第1に、一部の紛争は和解のほうが望ましいのに裁判に持ち込まれる。第2に、和解の時期が遅すぎて、それまでに不必要な費用がかさんでしまう。第3に、紛争当事者は、単なる金銭的利害を超えて、すべての関係者のために資源のパイを拡大できるハイレベルな取引のチャンスを逃してしまう。

賢明な経営者は、性急に訴訟を起こすのではなく、弁護士の助けを借りて和解のための取り決めについて交渉する。現実的な問題解決の道を見つけるために弁護士とより緊密に協力することで、経営者は裁判になる前に紛争を解決し、法的費用と結果をよりうまくコントロールすることができる。