誰だって期待されればそれに応えようとするものだ。しかし、「部下不在」「達成不可能」な目標は、部下を困惑させるだけ。あなたの期待を部下のやる気につなげるにはどうすればよいのだろうか。

部下を信じて任せれば、
必ずベストを尽くしてくれる、と思うのは間違いだ

部下にベストを期待すれば部下はベストを返してくれる──スターリング研究所の創設者、J・スターリング・リビングストンが1969年に「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌に発表した独創的な論文「ピグマリオン・マネジメント(マネジャーの期待と信頼が部下を育てる)」で取り上げたこの現象は、実に理にかなっているように思える。逆に、部下にあまり期待しなければ部下は貧弱なパフォーマンスしか返してくれない。INSEAD(欧州経営大学院)教授、ジャン=フランソワ・マンゾーニとジャン=ルイ・バルソーは、これを「失敗確実症候群(set-up-to-fail syndrome)」と名づけている。

だが、高い期待を設定して、部下にそれを告げるだけで仕事をしたと思っているマネジャー、つまり期待設定のプロセスに部下を参加させないマネジャーは、あまり期待しないマネジャーと同じく、貧弱な成果しか得られない。パフォーマンスについての期待を部下に首尾よく達成させるためには、上司は次の4点を実行する必要がある。