「メキシコとの国境に巨大な壁を作ろう」「イスラム教徒の入国を禁止すべきだ」など、過激な発言を繰り返すドナルド・トランプ氏が、約半年にわたるアメリカ大統領選挙の予備選挙を制し、共和党の大統領候補に正式指名された。2016年11月に行われる大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン氏との一騎打ちとなる可能性が高い。なぜアメリカで、トランプ氏がこれほどの人気を集めているのか? 大統領選挙をはじめ、カネの流れから見えてくるアメリカの真実をレポートした書籍『政府はもう嘘をつけない』(角川新書)を発刊したばかりの堤未果さんに聞いた。
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1%の超富裕層が政治を動かす「株式会社アメリカ」

過激で現実性の伴わない発言ばかりを繰り返すトランプ氏が、まさか本当に大統領候補に指名されることになろうとは、思っていなかった人が多いのではないだろうか。特に、日本のメディアを見ているだけでは、なぜトランプ氏にこれほど熱狂する人がいるのか、理解することは難しい。

この「トランプ現象」を理解するには、まず、アメリカ政治の現状を知る必要がある。実は政治にまつわるカネの動きを探ると、アメリカという国家を、1%に満たない富裕層が動かしているという構図が見えてくる。アメリカでは、政治家への企業献金には事実上上限がなく、企業は政治家に献金をすることで、自社に都合の良い政策を、いくらでも「買う」ことができるのだ。政治は企業にとって、政治献金で投資した以上の大きな見返りが期待できる、ローリスク・ハイリターンの優良投資となっている。アメリカが「株式会社アメリカ」たるゆえんだ。

大統領選挙でも、超富裕層からの巨額の資金が、共和党・民主党両党の有力候補に流れ込んでいた。例えばバラク・オバマ大統領は2008年の大統領選挙では7億5000万ドル(約750億円)もの献金を集め、2期目の選挙では過去最高の10億ドル(約1000億円)を集めている。政治はまさに「カネがものを言う」世界になっていることを端的に表している。