小4にも理解可能なスピーチ

「人民の、人民による、人民のための政治」

これは、1861年に第16代大統領リンカーンが、ゲティスバーグで行った演説だ。歴上最も有名な演説のひとつされるが、特にOf the people, by the people, for the people. のキレがよく、韻を踏んで、口にするのも耳にするのも心地よい。何よりも、誰にとってもわかりやすい言葉だった。このわかりやすさこそが人の心をつかみ、言いやすさが語り継がれる理由なのだろう。

では、今回の米国大統領選の候補者たちの演説はどうだろう。米国カーネギーメロン大学のエリオット・シューマッカーとマキシン・エスカナジー博士らは、リンカーンのスピーチをはじめ、今回の米国大統領選候補者、共和党のドナルド・トランプや民主党のヒラリー・クリントンらのスピーチを分析している。

エスカナジー博士らが用いたのは、REAPと呼ばれる分析方法だ。本来は学校で教師がリーディング教材を選ぶときに、文章のグレードの知るために開発されたという、語彙と文法の両方を1~12のレベルに分けるものだ。日本にあてはめると、およそ小学生がグレード1~6、中学生が7~9、高校生が10~12に相当する。ちなみに、先にあげたリンカーンの演説全体のグレードは11で高校性レベルだった。

このグレードレベルから見ると、一番レベルが低かったのは……、お察しの通りドナルド・トランプだ。その破天荒な演説ぶりは有名で、以前米ボストングローブが「トランプのスピーチは小学4年生のレベル」と報じたことがある。Boston.comのサブタイトルは『“I’m rich 私は金持ちだ”くらいのフレーズは誰にも理解される』だった。これも感覚的な話ではなく、分析の結果だ。トランプは単にレベルが低いのだろうか? まず、その内容やほかの候補者との比較を見てみよう。