聞き手に合わせた、わかりやすさが秘訣
REAPとFleschと呼ばれるふたつの分析方法で、候補者たちの語彙や文法のレベルを見て行こう。
各候補者の中で、もっともスピーチの文法グレードが低いトランプは、小学6年生にも届かず、もっとも高いのがサンダースとなっている。トランプは過激な発言で注目を集めるのも特徴だが、実はトランプは聴衆や会場に合せてそのスピーチの文法レベルを大きく変えている。選挙が進み、より一般聴衆を引き付ける必要がある場面になるほど顕著になっていく。
たとえば、2月のサウスカロライナのスピーチで「メキシコとの国境に壁を作る。その費用はメキシコ側に出してもらう」と発言したテキストを見よう。それぞれのフレーズが短く、本気かと疑いたくなる理屈は興味深い。
We are going to do the wall /and by the way, /who’s going to pay for the wall ?/
Mexico’s going to pay for the wall/ and it’s very easy./
The other politicians come down,”you can’t get Mexico to pay for the wall.” /
I said,“100 percent.” /
We have a $58 billion trade deficit with Mexico./
The wall is going to cost $10 to $12 billion, OK ? /Believe me, /they will pay.
(訳文)
壁を作ろうと思うが/ところで、/その壁の代金は誰が支払うか?/
メキシコが支払うだろう。/とても簡単なことだ。/
ある政治家は「メキシコに支払わせるなんて無理だ」というだろう。/
だが、私は「100%だ」と。/
私たちはメキシコに対して5800万ドルの貿易赤字がある。/
壁は1000万ドルから1200万ドルだ。わかるだろう?/本当だ、メキシコが支払う。
たとえ論理はおかしくとも、その論点はわかりやすい。実は、2016年2月のアイオワ州の党員集会ではトランプの文法レベル「9」(中学生レベル)にあがったところ、得票は2位に甘んじている。ところが、そのあとのネバダ州では今までよりもレベルを下げて「4」程度に戻すと、今度は圧勝だ。それは「わかりやすさ」が人を動かす力を持つことを実証してくれているかのようだ。
ところが、文法のバリエーションとなると、トランプは格段にレベルがアップする。トランプの型にはまらない話し方は、このバリエーションから来るもので、人を飽きさせないのかもしれない。
そして、同じく言葉を変えて語彙や文法のグレードを徐々に下げているのが、民主党の最有力候補ヒラリーだ。文法はトランプ氏のグレード5がもっとも低く、そこに続くのがヒラリーの7となっている。人を惹きつけるほどに、選挙は有利に働くのは誰もが知る通りだ。こうしてふたりは、選挙においてスピーチに力を入れ、できる限り多くの人にリーチし、勝利に近づいていることがわかるだろう。
では、私たちのビジネスに、具体的にどのように生かしたらいいだろうか。