海外市場で勝つためのオールジャパン戦略
【田原】産業化のカギを握るのが世界進出です。最初はインドで現地生産したそうですね。どういった経緯で?
【岩佐】4年前、ある会社のCSR担当者から、インドの農村を豊かにしたいので一緒にやらないかといわれたのが最初です。震災でそれどころじゃないといったのですが、視察にいくと、インドの農村は本当に貧しくて、みんな山元町が受けたダメージとほとんど変わらないくらいのひどい生活をしていました。それを見て、何かお手伝いできることがあればやろうと考え直して、インドでも現地法人を立ち上げてイチゴをつくっています。
【田原】インドは暑いですが、おいしいイチゴをつくれるんですか。
【岩佐】私たちの農場はデカン高原にあります。標高が高くて、インドでは涼しいところなので、つくれなくはないです。いまは20アールくらいですが、フランチャイズ化して広げていきたいですね。採算が取れるまで、あと1~2年はかかりそうです。
【田原】他の国はどうですか。
【岩佐】サウジアラビアで検討中です。イスラムの方はメッカに巡礼に行って聖水を汲んで帰ってきます。その聖水でイチゴを栽培すれば売れるかなと思ったのですが、サウジは現地の企業との連携が難しい。向こうで企業を実質的に経営しているのはインド人やトルコ人などの外国人で、途中から彼らが出てきて話をひっくり返されることが多いんです。だからいまは慎重に少しずつ進めている段階ですね。もともと山元町の産業振興が目的ですから、優先順位は現地生産より輸出のほうが高いです。
【田原】山元町のイチゴは、もう世界にも輸出しているのですか。
【岩佐】すでに香港やシンガポールを中心に輸出をしています。ただ、シェアを取るのはこれからですね。たとえば香港だと、アメリカ産が50%、韓国産が40%で、この2つが圧倒的に強い。日本はわずか2.9%です。
【田原】へえ。アメリカと韓国が強いんですか。
【岩佐】アメリカは日本のイチゴと種類が違って、甘くないけど硬いんです。だから輸送性に優れていて、カリフォルニアでつくったイチゴが世界中どこでも出回っています。韓国は国内市場を自由化してアメリカ産イチゴにやられてしまったのですが、そのことがきっかけで、逆に政府がイチゴを輸出奨励作物に指定して、農家に補助金をつけるようになりました。韓国の農家は政府の予算で海外の販路を開拓しているので強いんです。
【田原】岩佐さんは、そこにどうやって割って入るつもりですか。
【岩佐】香港のスーパーにいくと、博多のあまおうや熊本のひのしずくというように産地別に並べられていて、外国の消費者にはわかりにくい。外国でシェアを取るなら、国内の競争をそのまま持ち込むのではなく、ジャパンブランドでやるべき。オールジャパンの産地連携ができれば、日本のイチゴ産業にも勝機があると思います。
岩佐さんから田原さんへの質問
Q. 相次ぐ不倫スキャンダル。どう思いますか?
【田原】もちろん不倫はしないに越したことはありません。でも、頭で考えるほどうまくコントロールできないのが男と女です。男にとって、男は基本的にライバルです。自分の決定的な弱みは女性でないと見せられないから、そういう相談をしているうちに情が入り、話だけで済まなくなることもありますよ。外で気を張って戦っている人ほど、この罠にハマりやすいから要注意です。
もし不倫をしてしまったら、隠そうとしないほうがいい。いまの世の中、隠し通そうとしたって隠し通せるものではありません。僕の場合は、まったく隠さなかった。どうして不倫をしたのか、本にも理由を書いたくらいです。僕のように初めから堂々とオープンにしていたら、たとえ批判されても大きな問題には発展しにくいと思います。
田原総一朗の遺言:「不倫するなら隠すな!」
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。