【田原】関山さんはどうして自分ならできると思えたのですか。米軍や大手メーカーが失敗していたとわかったら、普通は自分たちも無理だと考えますよね。
【関山】タイミングですかね。バイオと情報科学の融合が進んで、1990年代ならできなかったことが当時はできるようになっていました。一度頓挫したプロジェクトを企業が復活させるのは大変ですが、私たちはそうした組織的なしがらみもないし、やるならいまだろうと。
【田原】具体的にどのような研究をしてきたのですか。
【関山】地球上には3万数千種のクモがいます。それらの遺伝子を解読していくと、だいたいどのクモにも似た塩基(DNAの構成要素)の並び方をしている部分があります。そこがクモの糸の基本コンセプトなので、微生物に組み入れればクモの糸の本質的な特性は再現できます。ただ、クモ糸タンパク質は分子量が大きく複雑なので、クモ糸の遺伝子をそのまま微生物に入れてもつくってくれません。そのため微生物に適した並び方に変えてあげる必要があります。クモ糸の特性を保ちつつ、生産性が高まるようにDNAを人工合成して最適化していく。その研究を日々繰り返してきました。
【田原】DNAって、そんなに簡単に人工合成できるのですか。
【関山】クモの糸のように複雑で大きいDNAを合成するのは難しかったので、大学院に入ってまずその技術を研究しました。技術ができたのが1年半後。さっそく合成したDNAを微生物に組み込んで、修士卒間際に数ミリグラムの糸ができました。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)