IT技術を活用し、新しい金融サービスを生み出す「フィンテック」。2015年10月、経済産業省が研究会を開催するなど急速に注目が集まる。日本におけるフィンテックの旗振り役に、お金の未来を聞いた。
テクノロジーでお金の悩みを解決
【田原】御社は日本を代表するフィンテック企業の1つだと聞きました。最初にこの質問で申し訳ないですが、フィンテックっていったい何ですか?
【辻】一般的には、ファイナンスとテクロノジーが一緒になったものだと言われています。私なりの言い方でいうと、テクノロジーで金融におけるユーザーの行動を変える、あるいはテクノロジーでユーザーを便利にするサービスをつくることがフィンテックだと思っています。
【田原】ごめんなさい、まだよくわからない。具体的に聞きましょう。辻さんのところがやっているマネーフォワードは、フィンテックのサービス?
【辻】そうです。みなさん、自分の財産は銀行や証券、保険、不動産などいろんなところに散らばっていますよね。それから、銀行から光熱費を引き落としたりカードで買い物したりして、いろいろとお金も使う。マネーフォワードを利用すると、それらの情報を自動で一元管理できます。
【田原】全自動家計簿みたいなものですか。
【辻】はい。家計簿をつけていた人はこれまで自分で1枚1枚レシートを見て、家計簿やエクセルで計算しなくてはいけませんでした。一方、マネーフォワードは自動で出入金履歴などの情報を取ってきて、これは食費、こっちは光熱費というように人工知能で勝手に仕分けしてくれます。
【田原】なるほど。たしかに家計簿をつけていた人は楽になるかもしれません。ただ、僕のようにそもそも面倒くさくて家計簿をつけていない人は、「多少、便利になっても」という感じがする。そういう人にも何かメリットはありますか。
【辻】節約しやすくなります。一時、自分の食べたものを記録すると痩せるというレコーディングダイエットが流行ったことがありました。あれと同じで、マネーフォワードを使うと、いま自分がいくら持ち、いくら使ったかという情報を見える化することで、行動が変わり、節約が進みます。実際、当社のプレミアム会員の方はマネーフォワードを使う前後で約2万円を節約できたというデータもあります。
【田原】家計が見えればムダもわかって、ここを削ろうと思えるわけですね。
【辻】私たちが本当にやりたいのは、ユーザーさんのお金の悩みを解決すること。ですから、将来のためどう資産運用すればいいのかということも解決していきます。ただ、未来をよりよくしていくには、まず過去と現在を知らなくてはいけません。それがマネーフォワードで簡単にできるようになったということです。
【田原】未来を改善するサービスというのも、もうやっているのですか。
【辻】生保の営業がよくやるライフタイムシミュレーションを、いまマネーフォワードでもやろうとしています。たとえば子どもが何歳で生まれ、住宅を何歳で買いたいといった情報を入力すれば、そのプランの必要額を算出して、ここは資産運用しよう、この部分は節約しようと教えてくれます。