【田原】微生物をデザインする? どういうことですか。

【関山】微生物を育種するのではなく設計してつくるのです。たとえば何か有用な微生物がいたとします。生物が倍に成長する時間をダブリングタイムといいますが、この微生物のダブリングタイムを短縮できれば工業的な生産性が高まります。そのためには、どの分子を増強すればいいのかというようにデザインしていくわけです。

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スパイバー社長 関山和秀氏の略歴

【田原】それで関山さんは山形の先端生命科学研究所に進学される。もともと文系志望だったのに、よく研究できましたね。

【関山】はじめは、研究室のみんなが何を話しているのかわからなくて困りました。でも、単語がわかってくると意外にすんなりついていけるようになった。大切なのは、ロジカルに考えられるかどうか。それができれば、文系も理系も関係ないんです。

【田原】次に、クモの糸との出合いを聞きたい。関山さんは研究テーマを探しにハーバードビジネススクールに行こうと考えていたそうですね。

【関山】はい。私はもともと文系なので最先端の研究に詳しくありません。世界のトップのところに行けばおもしろいテーマでやっている人がいるんじゃないかと思って、ハーバード行きを考えました。

【田原】ところが、冨田さんに相談したら怒られたとか。

【関山】怒られたというか、「おまえは人のフンドシで相撲を取るのか」と挑発されました。カチンときて反論したのですが、よく考えてみると、冨田さんが言っていることが正しい。鶴岡の先端研は海外からの留学生が多く、世界でもトップレベルの研究所といえます。ここで研究テーマを見つけることができなければ、世界のどこに行っても見つけられない。やっぱり鶴岡で探そうと考えなおしました。