正規従業員への規制緩和で格差固定化を防ぐ

第二が労働市場の流動化促進である。特に仕事や企業に関する情報面での整備が必要だ。なかでも、仕事に関する情報の整備は多くの場面で指摘される。いわゆるマッチング精度の向上のためである。

だが、マッチングという意味では、さらに大きなポイントは、会社とのマッチングである。多くの人が、会社についての情報が乏しいなかで、仕事に関する情報だけで転職することに不安を覚えている。また、2回目、3回目の転職は、仕事とのミスマッチではなく、会社とのミスマッチが大きいという研究結果も報告されている。

こうした情報開示のためには、前々回議論した「従業員視点からの企業価値評価」の仕組みの開発が必要である。こうした仕組みは、その企業での働きがいや働きやすさを評価するものであり、企業とのミスマッチを防ぐ効果がある。さらに、大企業との比較で、人材獲得が難しい中堅中小企業において、よりよい人材の確保へと結びつく可能性があるだろう。

半面、こうした情報開示は、転職の誘因となり、企業としては働く人のリテンションが難しいという反論もありうる。でもそれは避けられないことだし、また望ましいことでもある。なぜならば、こうした仕組みによって、働く人がさらにエンパワーメントされ、人材活用や獲得における企業間の競争が起きれば、各企業でいい人材マネジメントへと変革するきっかけとなるかもしれないからである。

そして、第三が、雇用契約の見直しである。具体的にいえば、競争によって人材入れ替えを促進する契約の仕組みである。正規従業員に関する規制緩和だともいえよう。見方によっては、働く人にとって厳しさが増す仕組みである。