COP15で意欲的な温室ガス排出量削減案を提示した日本だが、筆者は、そもそも国別アプローチに限界がある、と説く。現在の枠組みに代わる効果的役割を果たすという、セクター別アプローチとLCAの仕組みと効用を解説する。

足並み揃わず成果に乏しかったCOP15

昨年12月にデンマークのコペンハーゲンで開催されたCOP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)は、かろうじて決裂は回避したものの、大きな成果を挙げずに終わった。「期待はずれ」(ハローゾ欧州委員長)、「これだけでは気候変動の脅威を解決することはできない」(EU議長国スウェーデンのラインフェルト首相)というのが、COP15に対する率直な評価であろう。

COP15の交渉が難航するであろうことは、事前に十分予想されていた。当初、COP15は、「ポスト京都議定書」の国際的枠組みを決める場となるはずであった。1997年に京都のCOP3で採択され、2005年に発効した京都議定書は、08~12年の第一約束期間における世界各国の温室効果ガス排出量削減義務を定めたものである。京都議定書の第一約束期間の終了は2年後に迫っており、COP15は、その後(13年以降)の温室効果ガス排出量削減の国際的枠組みを決める舞台として、期待されていた。

しかし、「ポスト京都議定書」の国際的枠組みにおいて国別の温室効果ガス排出量削減義務を明示することに対しては、温室効果ガス排出量世界最大の中国や、同第2位のアメリカ、同第4位のインドが、反対ないし消極的な姿勢をとり続けている(そもそも、これら3国は、京都議定書でも、国別温室効果ガス排出量削減義務の枠組みから離脱した。この結果、京都議定書で削減義務を負った国々の温室効果ガス排出量の合計値は、世界全体の総排出量の28%にとどまることになった[07年実績で計算])。COP15の交渉が難航するであろうと予想されたのは、このためであった。

鳩山由紀夫首相は、COP15に、「すべての主要排出国の参加による意欲的な目標の合意」を前提条件に、日本としては、20年度までに温室効果ガス排出量を90年度比で25%削減するという方針で臨んだ。しかし、予想どおり、この前提条件はCOP15では満たされず、温室効果ガス排出量削減に関する「ポスト京都議定書」の国際的枠組みづくりは、今年以降にずれ込むことになった。鳩山首相がCOP15で掲げた前提条件が実現する見通しは、今のところ立っていない。

しかし、ここで論点として取り上げたいのは、鳩山首相が掲げた25%削減目標の前提条件の実現可能性うんぬんではない。そもそも、日本が25%目標を達成したとしても、地球温暖化をストップするうえでの貢献度はそれほど高くないという論点である。それは、国別目標を掲げて温室効果ガス排出量を削減しようとする方式(いわゆる「国別アプローチ」)の限界とでもいうべき問題である。