中国工商銀行と危機的なVWを引き合わせる
米TIME誌は「2015年の顔」としてドイツのアンゲラ・メルケル首相を選んだ。欧州の債務危機や中東などからの難民受け入れに対する行動力を評価し、「多くの政治家であれば恐れることを自国に求め、暴政と安易な便宜主義の双方に立ち向かい、確固たる倫理的指導力が不足しがちな世界に、それをもたらした」ことが選出理由だった。一方、彼女は15年10月に中国を訪問している。訪日は在任10年で3回だけだが訪中はほぼ毎年。いかに中国との関係を重視しているかがわかる。
今回の訪中もトップマネジャーとして大勢の企業代表団を引き連れていたようだが、その中にフォルクスワーゲン(VW)の新しいCEO、マティアス・ミューラー氏の姿もあった。世界最大の新車市場である中国でVWは2013、14年と2年連続で販売台数トップを記録している。中国はディーゼル車の販売台数は少なく、環境規制が緩いので、排ガス不正問題の影響はそれほど大きくないのではないかと言われている。
それでもメルケル首相が排ガス不正問題の処理に忙殺される新CEOを同行させた最大の目的は、今や世界最大の資産規模を誇る中国工商銀行とVWを引き合わせること。思惑通り、VWと中国工商銀行は「戦略的提携関係」に向けた枠組み合意に署名、その場にメルケル首相と中国の李克強首相も同席したと報じられている。排ガス不正問題が拡大してVWは危機的状況にある。アメリカで発覚した規制逃れの不正なソフトウェアを搭載した車は、全世界で1100万台販売しているという。不正車種はガソリン車のアウディ、ポルシェなどの高級車にも広がって、リコールコストやペナルティ(アメリカの制裁金だけで2兆円を超えるとも)、訴訟費用など莫大な資金が必要になる。もともと不振のアメリカ市場は撤退せざるをえないだろうし、他の地域でも販売の大幅な落ち込みは避けられない。VWの中古車だって売れない。
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