以前、成田さんが洗濯機を買いにいったときに、頼みもしないのに長々と7、8分も商品説明をして、最後に説明しきったのか「フゥー、いかがでしょうか」といった販売員がいた。「自分勝手に“やりきった感”にひたっているのを見て呆れたことを、いまでもよく覚えています」と成田さんは話す。
ところで販売や接客の際、顧客に向かってどのような立ち位置で応対をしたらいいのだろう。マナーコンサルタントの西出さんは、顧客の左斜め前がベストポジションだといい、その理由について「販売でも接客であっても、お客さまの心、つまりハートに訴えていくことがとても重要で、そのハートがどこにあるかというと“心臓”なのです。そこに近い左斜め前から自分の思いを伝えることで、心の扉を開いてくれるようになります」と語る。
逆に顧客を案内する際には、右斜め前に位置するが、これにより自分の心がお客さまの側に向くため、顧客は安心してついていけることにもなる。ただ、この案内の作法で加賀田さんがよく不満に思うのが、出張などでホテルに泊まったときレストランで、「どうぞこちらのテーブルへ」と案内されること。「私は窓際がいいと思っていても、一方的に決められてしまいます。結局、店の都合しか考えていないのです」と加賀田さんは憤る。
とはいえレストランなどの場合、店の都合でどうしても席の移動をお願いしなければいけないようなケースも出てくる。そのようなときに西出さんは一流と三流の明暗を分ける作法として“クッション言葉”の活用を勧める。たとえば、「お客さま」と呼びかけた後、「おくつろぎ中に大変申し訳ございませんが」とクッション言葉を入れてから、「席をお移りいただけないでしょうか」としたら、確かに押し付け感はなくなる。
この「呼びかけ+クッション言葉+お願い」という“公式”は応用がきく。営業の再訪問のアポを取る際に「社長、ご多忙のところ恐れ入りますが……」と一言入れたり、必要な情報として家族構成を聞きたいときには「お客さま、差し支えなければ……」と一言加えれば、相手も嫌な顔をせずに応じてくれるようになるはずだ。