クリーニング市場は最盛期には8200億円あったが、バブル崩壊後、縮小し続け、現在では4000億円と半減した。町のクリーニング屋の廃業が増える中、喜久屋は首都圏に130店舗を構え、顧客の衣類を保管し、宅配する新たなサービスを生み出して成長を続けている。
半年間無料保管のクリーニングサービス
町中からクリーニング屋が減っている。バブル期にはデザイナーズブランドなど高級な衣服が流行ったことで、クリーニング市場が活況を呈し、1992年にはその市場は8200億円に達した。ところが、バブル崩壊後は市場が縮小し続け、現在では4000億円前後と半減した。1世帯当たりのクリーニング代も92年には年間1万9000円を超えたが、2010年には8000円強と半減以下に減った。
「低価格のファストファッションならわざわざクリーニングに出さなくても家で洗えばいい。その代わり、いま需要が伸びているのが衣服の保管サービスです。マンションなどは収納スペースが少ないが、逆に家財道具は増えているから収納に困るんです。喜久屋にクリーニングに出せば、そのまま衣服を保管するので、お客さまの家は広く使える。保管と言うよりタンスの機能を提供するサービスです。洗濯はそのついででいいんです」
喜久屋社長の中畠信一(52歳)は語る。
同社は首都圏に130店舗を抱えるクリーニングチェーンだ。クリーニングの溶剤を絶えず清潔に保つなどその品質にも力を入れているが、同社の付加価値は保管サービスにある。
「シティクロゼット」というサービスは、店頭で1着から受け付け、クリーニング代だけで半年間は無料で保管し、その後も一定額を支払えば2~3年間ずっと保管してもらえる。返却日を事前に指定する必要はなく、必要になれば最短で翌日には引き取れる。スマホやケータイから保管状況や預けたものを確認し、返却日を指定できる。宅配便で送ってもらうことも可能だ。
湿度や温度などが管理された部屋で保管されるので、コートや礼服やちょっとしたおしゃれ着などは家に置いておくより安心だ。洋服だけでなく、和服、布団、ブーツなども保管してくれる。しかも、返却日にはプレスして渡してくれるので、シワもできない。
もともと喜久屋では2003年から、「イークロゼット」というウエブサイトでクリーニングの依頼を受け付け、宅配便で集荷・配送し、最長半年間無料保管するサービスを行っていた。ただ、受付時期が春と秋の年2回だけだったが、これも2015年春から通年で受付するようになった。