被災地域は産業・経済の中心地

現在の地震学では、南海トラフ巨大地震で起こりうる災害を定量的に予測している。国が行った被害想定では、「3.11」を超えるM9.1、また海岸を襲う最大の津波の最大高は34メートルに達する。南海トラフは西日本の海岸に近いので、1番早いところでは2分後に巨大津波が海岸を襲う。

地震災害としては、九州から関東までの広い範囲に震度6弱以上の大揺れをもたらす。特に、震度7を被る地域は、10県にまたがる総計151市区町村に及ぶ。その結果、犠牲者の総数32万人、全壊する建物238万棟、津波によって浸水する面積は約1000平方キロメートル、と予想される。

南海トラフ巨大地震が太平洋ベルト地帯を直撃することは確実で、被災地域が産業・経済の中心地にあることを考えると、東日本大震災よりも1桁大きい災害になる可能性が高い。すなわち、人口の半分近い6000万人が深刻な影響を受ける「西日本大震災」だ。

経済的な被害総額に関しては220兆円を超えると試算されている。たとえば、東日本大震災の被害総額の試算は20兆円ほどだが、西日本大震災の被害予想はその10倍以上になる。

南海トラフ巨大地震の起きる時期を、年月日レベルで正確に予測することは、今の技術では不可能だが、古地震やシミュレーションのデータから、西暦2030年代に起きるだろう(拙著『生き抜くための地震学』を参照)。