消費増税はお手本通りの失敗
「長期的に、アベノミクスは日本の財政破綻を招く」という批判が一部にあるが、話が全く逆だ。経済成長を実現し、全体のパイを大きくして税収を増やさないと財政再建はできない。歴史を振り返ってみても、デフレ不況から脱却しようとする政府は、世の中に出回るお金の量を増やす「金融緩和」と、公共事業などで政府の支出を増やす「財政出動」の両方を行うポリシーミックスという経済政策をとってきた。
たとえば戦前の世界大恐慌時、日本は高橋是清蔵相が金利の引き下げや日銀による国債の直接引き受けに加え、積極的な財政出動を行う「高橋財政」により、いち早く景気回復を遂げた。
アベノミクス第一の矢は金融緩和、第二の矢は財政出動であり、デフレ対策としては定番の政策。まさにアベノミクスは歴史から積極的に学び、その知恵を政策に活かそうとしている。
ちなみに第三の矢である成長戦略だが、これは過去の歴史においても、デフレ脱却のために実施されたことはない。経済成長には必要だが、デフレ不況脱却という点では重要性は低い。
では、歴史的に見てもデフレ対策として正しいアベノミクスを実施したにもかかわらず、日本のGDPは2四半期連続(14年4~9月)でマイナスとなってしまったのはなぜか。これは、野田政権時の3党合意で決まっていた14年4月の消費税8%増税が、アベノミクスに冷水を浴びせた結果である。
「アベノミクスは失敗だった」「失敗を認めて今すぐやめるべきだ」という意見があるが、このような考え方は危険だ。過去に、中途半端な段階でポリシーミックスをやめたために、デフレ不況脱却を頓挫させた例があるからだ。たとえば、1930年代、米国で大恐慌が長引いたのは、36年にルーズベルトが大統領選に再選した後、それまでの金融緩和と積極的な財政出動を転換し、財政再建を掲げて金融と財政の引き締めを行ってしまったからだ。今回の消費税増税は、経済政策の歴史を振り返ってみれば、「こうすると失敗する」というお手本通りのことをして、アベノミクスにブレーキをかけたのだ。
今後、アベノミクスが成功するかどうかは、それを継続できるかどうかがカギとなる。金融緩和と財政出動のポリシーミックスを粛々と継続していけば、名目経済成長率3%、実質経済成長率2%程度という目標は2年くらいで達成できると考える。