もちろん謝ったからといって、相手側の要求を何でも受け入れるというわけではない。たとえば損失補填のように、違法であるとか非常識な求めには応じない。しかし、それ以外なら、かなり踏み込んだ謝罪も厭わないとキャロン氏は言う。

「もし私たちが大きなミスを犯してしまい、相手から『すぐに飛行機で(海外の)本社へ行って謝ってこい!』と言われたら、もちろん行きますよ。異例ですが、違法でも非常識でもないからです」

まさに誠心誠意の謝罪である。しかも、それだけではない。

キャロン氏が愛用するメモ用紙と通勤用自転車。メモには鉛筆を使っている。

「謝罪の言葉だけでは何の意味もありません。謝罪し、許していただいたあとで、お客様のために行動することが大事です。まずは失敗の原因を解析し、お客様に情報を開示しながら再発防止を図ります。そのうえで、挽回するためのプランを練り、実現のために努力を重ねるのです」

キャロン氏によれば、謝罪とは関係性を再構築する第一歩にすぎない。謝るのはあくまで過去に起こったこと。だからこそ、早めに発見し報告して反省する。問題意識を共有し、前向きな行動につなげていくのだ。カリフォルニア生まれの明るさで、過去の失敗を未来の成功に変えていく。

(的野弘路=撮影)
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