顧客や上司・部下を怒らせてしまった……。大事なのは、汚名返上に向けた初動の対応だ。「雨降って地固まる」ための行動セオリーとは。
苦情はビジネスヒントの塊といわれる。しかし、理屈では、苦情内容から商品やサービスの改善点を抽出することで収益アップできるとわかっていても、イザ応対となると尻込みしてしまう人が多い。
2009年に発表された本邦初の『日本苦情白書』によれば、ビジネスマンなどが苦情に接したとき、「よい意見が聞けるかもしれない」と前向きに捉えるのは3割弱。多くは「面倒だ」「(客を)押し返してやる」「対応だけはしておくか」と、後ろ向きの気持ちでいることが判明した(図参照)。
「苦情を言いがかりと決めつけ、さっさと処理してしまいたい一心で言い逃れや適当な嘘でごまかし、かえってこじれて泥沼にはまる企業は多いです。その分、苦情に費やす時間が増えコストも増大します」とは、同白書の調査会社代表で、長年、百貨店でお客様相談室長を務めた関根眞一氏だ。ヤクザ・クレーマーなど特殊な客の案件を1000件以上対応した実績を持つ。
「クレーマーなどを除く、一般的な苦情対応の鉄則は、何より誠意を持つことです。まず、相手の申し出を十分に聞くこと。初期対応を誤ると何倍もの労苦となって返ってきますからね。そして、こちらの事情や経緯を正直に告げ、正直な回答をする。自分たちの不手際が明らかであれば、謝罪や弁償・補償などを迅速に行います」
この基本を踏まえたうえで関根氏が提案するのが、苦情に耳を傾けながら、その人の性格や癖を探ることだ。要するに、「相手は何を望んでいるのか」「その上限はどこまでで、下限はどこまでか」を見抜くことが重要なのだという。
「もっとも適切な苦情対応の落としどころは“下限のひとつ上”です。相手が満足するギリギリのラインを提示して決着させること。上限に近い対応をすれば当然、相手は喜びますが、それで味をしめた相手は、次の苦情を探すこともある。過度な平身低頭は逆効果です。むしろ、『粘ってもここまでか。過剰な期待した自分がバカだった』と思わせる対応がベストです」