顧客から苦情が入ったらどうするか。信頼を失うか、獲得できるか、大きな分かれ目だ。トップ営業マンの謝罪法を学ぶ。

売れ行き好調の輸入車。メルセデス・ベンツは2013年9月の新車登録台数でトップの座を占めた。価格280万円台の小型車Aクラスをはじめ多彩な車種をそろえてユーザーの裾野を広げてきたことが奏功した。

しかし、ユーザー層が広がったがゆえに出てくる苦情もある。たとえば、国産車からメルセデスに乗り替えた際によくある「初めての輸入車」への戸惑い。

「たとえば、オートライトシステムが該当します」――メルセデス・ベンツ浜松和田・初生両店の営業を統括する大隅知哉さんが言う。

メルセデス・ベンツ日本 浜松ヤナセ取締役営業部長 大隅知哉氏●1964年、静岡県生まれ。国産ディーラーを経て86年浜松ヤナセ入社。メカニック、サービスアドバイザー、サービス責任者を経て2011年より現職。

「オートライトは、暗くなると自動でライトが点灯するシステム。これは欧州車に共通しますが、点灯時期が国産車より早く、明るいうちに点くようになっています」

それを故障ととる顧客がいる。誤解を解くため、メルセデスの安全対策について説明することになるが「欧州車だから」といった紋切り型の説明では客の機嫌を損ねかねない。自分の主張が端から退けられたと相手が感じるからだ。

「お客様の主張を、まず受け入れること」が第一と大隅さんは言う。

「お客様の言われる故障が誤操作によるものでも、『使い方が間違っています』と頭ごなしに言われたら、誰でも不快になりますよね」

大隅さんは「このような使い方を試してみられてはどうですか」と勧める。客の誤りを正すのではなく、その誤りにみずから気づいてもらうようにする。それで操作がうまくいけば、正しい操作法を改めて確認し合うこともできる。いわば、顧客と一緒に問題を解決していくというやり方だ。

大隅さんは、メカニックからサービスアドバイザー、サービス責任者を経て営業へという自動車販売店では珍しい経歴を持つ。車じたいのトラブルには即応できる強みがある。しかし、説明すれば納得してもらえるケースばかりではないことも、経験的に知っている。