顧客から苦情が入ったらどうするか。信頼を失うか、獲得できるか、大きな分かれ目だ。トップ営業マンの謝罪法を学ぶ。
「お客様のニーズを聞き出して問題解決を図ることと、ご指摘を社内にフィードバックすることが役割です」――聞き手を安心させるような、遠藤奈美さんのゆったり、ほんわかした関西弁。採用が部門別に行われているとはいえ、お客様相談室に20年、「この業務ではピカイチ」(山本歩室長)という評価にもついつい納得してしまう。
電話、メール、手紙などでユーザーから年間約15万件もの連絡があり、うち約35%が苦情・クレームという同室は、万事ロジックありきの文化を持つ同社内で「唯一、正反対の部署」(広報担当)。まずは電話客との会話の基本的な流れからご説明いただこう。
「商品を使っていただいたこと、連絡いただいたことにまず感謝します。お客様がずっと話し続けているときは、ずっとそれを聞き続け、一区切りついたところで『ご不便をおかけしました』とお詫びします」
ただし事実関係が不明確なこの段階では、直接的な詫びの言葉ではないが、聞き手にお詫びと受け取ってもらえる「恐縮」という言葉を使う。事実関係は二の次で、客が言いたいことを言っただけという可能性もあるからだ。そこでもう一つ、「ぜひ今後の参考にさせていただきたいし、お客様の問題解決をさせていただきたいと思っておりますので、詳しくお話を伺わせてください」と踏み込む。
クレーマー、クレームという言葉は使わない……といった言葉遣いへの配慮は当然、徹底している。ただし同社では個々の会話を録音しチェック、点数化する社内評価のシステムがあるが、幾多のチェック項目の中で特に重視されるのは、言葉遣いのようなスキルではなく「話を聞く」「共感を示す」の2つの出来だという。顧客の心を鎮め、なだめるにはこの2つが不可欠だからだ。これができて初めて顧客は胸襟を開く。そこでようやく要望・ニーズを聞き出し、指摘の裏にある不満や改善のヒントを聞き出して解決。最後に「ファンになっていただく」わけだ。