母校のことは大切にしたい思い出
2人が会社を離れ、10年以上が過ぎた。坂本さんは10年ほどの会社員の時代を振り返り、「サラリーマンは辞めないほうがいい。会社員は結構、いいものですよ」とアドバイスを送る。
「会社にいる頃は、めちゃくちゃ楽しかったです。酒を飲んで、年齢とか、ポジションを越えて、大人がタメグチで話し合えるなんて最高にいい! ある会社に勤務していたとき、先輩が服や下着を脱いで、裸になって、猛烈に仕事をしていた、なんて事もなぜかありました(笑)。社員たちの共有フォルダにも、笑えることがありましたね。まあ、今はダメでしょうけれど」
武笠さんが横で笑いながら、話す。
「私も、楽しい職場でした。裸の人はいませんでしたが(笑)。今も、前職の同僚とは仕事などで関係があるくらいですから」
また2人とも母校・多摩美大のことは大切にしたい思い出と語る。
武笠さんは、「あの膨大な時間を、絵を描いて、工作をして過ごすことができたことが大きい」と話す。
「最近は、同窓会で会うと、勤め人が減ってきています。独立し、デザイナーやイラストレーターになる人が目立ちます。銀行や生保? いや、いないですね。そもそも、入社させてもらえないんじゃないですか」
坂本さんが語る。
「学生時代に、自分がどうしても見ておきたかった美術やデザインの世界を肌で感じ取ったこと、この感覚が大切なのだと思います。
デザインの真理を知り、ここは譲れない、という思いを持つこともできました。学歴で得たものは、自分の目で知りたかったことを見てきたぞ、そして知っているぞ、という自信を身に付けたことです。学歴の意味は、その自信ですよ。私の場合、モノづくりをするうえでも、ものすごく大切なものなのでしょうね」