一方、実践こそが最大のトレーニングと言うのが三木氏だ。

「外国人の先生について英語を習ったこともありますが、それよりも私の英語力は、膨大な数の英文メールのやりとりや、毎日行われる英語による電話会議など、日々の仕事の中で磨かれていった部分のほうが大きいといえます」

ただし、三木氏によれば、英語ができれば外国人とのコミュニケーションがうまくいくかといえば、そんなことはないそうだ。

「最初に結論を言って、そこからディテールに落としていくというのがアメリカ人のプレゼンテーション・スタイルです。ところが、日本人は細かいことをたくさん言って、最後に言いたいことに到達する。これではどんなに流暢な英語でも通じませんよ。相手の思考回路やカルチャーを理解し、それに合わせられることのほうが、英語力よりも数段大切なのです」

いい加減な英語では相手から信用されない

多くの日本人が英語を苦手だと感じるのは、間違いを必要以上に恐れるからだといわれることがある。実際、ビジネスの現場では、発音や文法の正しさはどの程度重要視されているのだろう。

「英語を使うのはネーティブだけではありません。中国人やインド人などネーティブではない人たちの英語は発音も聞き取りにくいし、文法的におかしな言い回しもたくさん出てきます。でも、それでちゃんとコミュニケーションが成り立っている。要するに通じればいいのです。また、相手に質問される前に、こちらから相手がイエス、ノーで答えられるような質問をする、ちゃんと伝わっていないと思ったら、もう一度別の言い方をしてみるなど、英語力が足りなければ補う工夫をすればいいので、それほど神経質になることはありません」

こう言う三木氏に対し、文法は正確なほうがいいと言うのが新貝氏の意見だ。

「発音は間違っていても、相手がネーティブならこういう単語のことを言っているのだろうと想像を働かしてくれるので、それほど気にすることはありません。しかし、文法は別。文法が不正確だと誤解が生じやすくなるので、会話で不安を感じたら、正しい英文をあとでメールするくらいの気づかいは必要です。それに、それなりの職位に就いているのに、いい加減な英語を話していたら、やはり相手からは信用されません。これは日本語でも同じです」

なお、三木氏も、組織の中で上にいくにつれて、求められる英語力のレベルも上がっていくのは避けられないと言う。