こうして生じた歪みが、税務会計システムにはいくつもある。おかげで、税率の上げ下げ以前に、課税されるベースとなる金額そのものが、本来あってしかるべき値より不当に小さくなっているのだ。
その歪みの元凶を整理すると、(1)タックス・イロージョン(課税の浸蝕化)、(2)タックス・シェルター(課税の隠れ場)、(3)タックス・ギャップ(税務行政の機能不全)の3つとなる。
まず(1)は、法人税制の欠陥や企業優遇税制などにより、企業から国や地方自治体に入るべき税収を、租税特別措置法という法律でいわば“見逃してあげる”仕組みである。
次に(2)は、本来課税逃れの金融商品を意味する言葉だが、拡大して節税や避税の目的で巧みに利益を圧縮する行為を指す。詳細は省くが、たとえば航空機・船舶のリース契約や土地転がしなどで故意に赤字を出して税金を逃れる手法がある。
(3)は、企業が脱税しても税務署員の手が回らず、本来なら税法通り取るべき税金を取っていないことだ。
私はこの3つで、課税ベースの約4割が削られていると見ている。
法人税制を改革するということは、その欠陥の是正と、租税特別措置による極端な優遇税制の廃止による歪みを解消することである。今、急務なのは崩壊した法人税制の「再建」であって「減税」ではない。その根幹から立て直さなければ、公平・公正な税制は実現できない。
課税ベースの改革は、税率引き下げのための“代替財源探し”のような志の卑しいものではなく、公正な法人税制の構築のキーベースとして、税制公正化の“魂の覚醒”を基本理念とすることが求められる。
国の稼ぎ頭である大手企業が、その儲けにふさわしい、各社の力に応じた無理のない税を国に払い、国民経済と国家財政に貢献する健全な税制、そして社会の仕組みの建設を切に願いたい。
(ライヴアート=図版作成 時事通信フォト=写真)