「禁煙外来」「禁煙クリニック」――。禁煙指導に的を絞った専門外来である。1994年にニコチンガムが処方薬として登場したのを機に、全国的に開設された。

治療は、まず患者に喫煙が「ニコチン依存症」や「習慣依存症」といった病気であることを強く認識してもらうことからスタートする。ここが最大のポイントとなる。

たばこに含まれているニコチンには依存性があり、依存状態のニコチンが切れてくると、ニコチン離脱症状が表れる。いわゆる「ニコチンへの渇望感」「いらいらしたり怒りやすくなる」「欲求不満」「不安感」「集中困難」「徐脈」などの症状である。

だから、たばこを吸って定期的にニコチンを体内に入れないと普通に生活ができない。これがニコチン依存である。日本人の喫煙者の約40%がすでにニコチン依存の状態に陥っている。

もうひとつが習慣依存。これはたばこを吸う行為自体が生活に組み込まれた状態になっているケースである。

心理面や行動面での依存傾向が進み、自分の意思でたばこをやめるコントロールができない状態は、もはや習慣依存である。

まず、どちらのタイプの依存症であるかをはっきりさせたうえで、治療法はそれぞれの依存のタイプに対応したものとなる。ニコチン依存に対しては「ニコチン置換療法」、習慣依存には「行動置換療法」である。

ニコチン置換療法とは、たばこ以外のもので体にニコチンを補給する方法。具体的にはニコチンガムやニコチンパッチを使う。

ニコチンガムに加え、99年にニコチンパッチが登場したことで、ある施設では禁煙成功率が60%から70%にアップした。

ただし、この数字はニコチン置換療法が終了して2カ月後の成功率で、1年後の成功率となると約30%となってしまう。それでも、成功率30%をはじき出せるのは、チャレンジする人が本気で「たばこをやめたい!」と思っているからである。ガムやパッチに対して依存性が生じることはほとんどない。

行動置換療法は「冷たい水を飲む」「氷のかけらを口に含む」「冷たい水で顔を洗う」などといった行動で、喫煙行為をコントロールしていく方法である。

病気に正しく対応すれば必ずたばこはやめられる。それによって、たばこが与える身体への悪影響から逃れることができるのである。

 

食生活のワンポイント】

禁煙外来治療中の2カ月間は医師の指導にのっとって治療を行う。その期間を越えると、しだいに食事が美味しくなる。

たばこをやめて太ったという人が多いが、そうならないためには以下の5項目を実践してほしい。

(1)食事はゆっくりよくかんで食べる。
食事を口に運んだら、少なくとも30回はかんでからのみこむ。こうすることで腹8分に抑えられ、太るのを防ぐ。

(2)夜は眠る3時間前までに食事を終える。
規則正しく3食を食べるようにする。加えて、眠るのが午後11時の人は、午後8時までに夕食を終えるようにすると、太ることを抑えられる。

(3)ウオーキングを20分、1日2回。
都心に会社のある人は、地下鉄の1駅、2駅手前で降りてウオーキング。

(4)ダンベル体操を加える。
有酸素運動のウオーキングのほかに、筋力をつけるためにダンベル体操も加える。筋肉がつくことでエネルギー消費が多くなる。

(5)充分な睡眠をとる。
睡眠7~8時間は必ずとるようにする。

以上を守ると、1日が多忙でたばこを吸おうなどと思わなくなってしまう。