腰痛に苦しめられている人は日本人の成人の10人に1人という。その腰痛の原因のひとつに「腰椎椎間板ヘルニア」がある。腰痛のみならず、悪化すると下肢に感覚障害、運動まひが起こり、重症では身動きできない状態にもなってしまう。
その苦しい腰椎椎間板ヘルニアの中に、1~2カ月で自然治癒してしまうケースのあることがわかり、学会で注目されている。
腰椎椎間板ヘルニアとは……。腰椎椎間板は腰椎と腰椎の間にあり、クッションの役割を担っている。椎間板の中心部にはゼリー状の髄核があり、その周囲を線維輪という竹のような組織が囲んでいる。この線維輪に物理的ストレスが加わって亀裂が生じ、髄核が後方に飛び出してしまったものを腰椎椎間板ヘルニアという。状態によって次の4つに分類されている。
1、椎間板全体が後方に膨隆する。
2、髄核が線維輪を破って後方に移動するものの、腰椎の後方で腰椎や椎間板を支えている後縦靱帯(こうじゅうじんたい)の下にとどまっている。
3、髄核が後縦靱帯を破ったが椎間板と連続している。
4、髄核が椎間板から遊離してしまった。
治療には保存療法と手術療法がある。腰椎椎間板ヘルニアを起こした当初は、まず保存療法が考えられる。痛みをとるために安静にしたり、消炎鎮痛薬を使ったり、コルセットをしたり、牽引をしたり。これで80%くらいの人は痛みが治まって改善する。
残り20%が手術となる。痛いうえに足首を動かそうとしても動かせない状態の人は、永久に麻痺が残ってしまうため、早急に手術を行う必要がある。
ただし、MRI(磁気共鳴画像)検査を行って、ブラックラインとして映る後縦靱帯を突き破っていれば、ヘルニアが1~2カ月で自然消退するので、手術の必要はない。髄核がブラックラインを突き破っていると、白血球のひとつであるマクロファージ(大食細胞)が異物とみなして、ヘルニアを食べてしまうからである。ヘルニアがなくなると神経を圧迫することがなくなり、症状は消えてしまう。
MRI検査で手術と診断された場合、最もポピュラーなのが「ラブ法」と呼ばれる手術法だ。また手術と保存療法の中間に位置する治療法として、「PLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)」「PN(経皮的髄核摘出術)」「MED(経皮的内視鏡治療)」などが行われている。納得のいく治療を十分に医師と話し合って決定すべきである。
食生活のワンポイント
腰椎椎間板ヘルニアを予防するには、ストレッチ、運動、荷物の持ち方、座る姿勢など、注意すべきことは多い。食生活に限定すると、以下の3点を実行してほしい。
(1)肥満を防ぐ
体重が多いと腰にかかる負担は大きくなるので、腰椎椎間板ヘルニアを起こしやすい。「1日のカロリー量を減らす」「間食をせずに3食規則正しく食べる」「よくかんで食べる」「脂肪分を減らす」など、自分に合ったダイエット方法をみつけて実行するとよい。1年に5キログラム程度の減量がダイエットを成功に導く。
(2)体の血流を良くする
背の青い魚にはDHAやEPAが豊富に含まれている。これらの魚の脂は血液をサラサラにする働きがあるので全身の血流が良くなる。血流が良いと体が動きやすいので腰椎椎間板ヘルニアを防いでくれる。
(3)体を冷やす食品は温めて食べる
野菜ではトマト、ナス、キュウリ、冬瓜、セロリ、ほうれんそう、レタス、たけのこなどが体を冷やす。この場合は温野菜にするほか、体を温める食材と組み合わせて食べると冷えを抑えてくれる。体を温める野菜は玉ネギ、大根、にんにく、かぶ、長ネギ、ししとう、ごぼう、にんじんなど。