“天皇陛下の病気”として広く知られるようになったのが「前立腺ガン」。1990年に3460人だった死亡者数が、2003年には約2.5倍の8418人にも増加している。年間の罹患者数は約4万人と推定されている。

前立腺とは男性にだけある臓器で、精液の一部の前立腺液を分泌している。膀胱の出口に尿道を包むようにしてあり、大きさはクルミくらいである。

これまで前立腺ガンは高齢者の病気といわれており、40代の人々にとっては、まだまだ他人事だった。ところが、陛下のそれ以来、40代の若い人々にも多く発見されるようになり、高齢者だけの病気とはいえなくなってきた。

前立腺ガンが多く発見されるようになったのは、前立腺ガンが注目され、多くの医療施設で前立腺ガンの腫瘍マーカーである「PSA(前立腺特異抗原)」検査がどんどん行われるようになったからである。そのため、40代の場合は、前立腺ガンでも超早期で発見されることが多く、しばらくは経過観察というケースも少なくない。

40代と若くして発見された超早期での前立腺ガンの治療法は、人生80年時代の今日、30年後の将来に再度ガンになることも予想され、手術が勧められる。が、最終的に判断をするのは患者自身。望むなら、今注目されている放射線療法の「小線源療法」も可能だ。

小線源療法の対象となる基本的患者は、まずは前立腺ガンの進行度がステージBであることが前提だ。これは前立腺内にガンがとどまっている「限局ガン」で、いわゆる早期ガンの状態である。そのうえで年齢が70歳以上で、小さくておとなしいガンであることがベストと考えられている。70歳以上というのは、70歳未満で体力の十分な場合は手術が最も根治性が高い治療法だからである。

そんななか、小線源療法を積極的に行っている施設では、なんと1年半待ちといったところまで出ている。

日本では03年7月に認可されたばかりだが、「数日の入院でいい」「副作用が少ない」「QOL(生活の質)に与える影響が少ない」「治療成績がよい」といった人気理由があげられている。

小線源療法は体外から放射線をあてる一般的な「外照射療法」とは異なる。放射線を出す、ごく小さなカプセルを前立腺に埋め込み、体内で放射線を患部にあて続ける治療法だ。

まず、患者に腰椎麻酔をする。次に患者の直腸に超音波プローブを挿入し、超音波画像を術者が見ながら、肛門と陰のうの間の会陰(えいん)部から前立腺に針を刺す。その針の中を通してカプセル状の線源を60~100個程度埋め込む。放射線量は徐々に弱まり、約1年間でほぼゼロになる。

適用基準をしっかり守っている施設では治療成績100%のところが多い。

 

食生活のワンポイント

日本人に前立腺ガンが増えた原因として、PSA検査の普及以外に、「高齢化」と「食生活の欧米化」が指摘されている。

●脂肪の摂取量を控える!
脂肪の摂取量を減らすために、牛・豚・鶏など肉類の摂取量を減らすとともに、食べる場合でも沖縄料理のようにゆでたり、煮込んだりして脂肪分を減らす調理を行う。また、天ぷらや揚げ物が多くならないように献立を考える。

●食物繊維を充分に摂る!
野菜の食物繊維と海藻のそれとでは多少働きが異なるので、野菜、海藻ともに充分摂るようにするのが大事。

●野菜を1日400グラム摂ろう!
肉中心になって日本人の体格はよくなったが、それ以上に野菜を摂っていれば欧米タイプのガンは増えなかった。肉を80グラム食べたら野菜はその倍は食べ、1日の野菜量は400グラムをめざすべきである。