白内障の手術は今日では、年間80万眼を超えている。また、医療機関に通院している人は180万人にものぼる。
白内障の90%が加齢が原因の加齢白内障(老人白内障)である。60代で70%、70代で90%、80代でほぼ100%が白内障になっている。今は40代、50代にも増え始めているので、お年寄りの問題とはいえなくなった。
眼はよくカメラにたとえられるが、白内障はレンズに相当する水晶体が白く濁る病気である。白く濁ることで、「眼がかすむ」「視力の低下」「以前より近くの物がよく見える」「まぶしい」などの症状を訴える。
水晶体は、水66%、タンパク質33%、微量物質1%から構成されている。白く濁るのは加齢に伴って水晶体の透明性を維持する機能が崩れ、それが水晶体の構成バランスを崩してしまうためと、現時点では考えられている。
その最大要因は「水晶体の酸化ストレス」。いわゆる活性酸素の悪影響である。眼球は常に紫外線にさらされている。紫外線は、水晶体に活性酸素を発生させて酸化障害、つまり、水晶体をサビつかせてしまう。南極上空のオゾン層の破壊が広まり、より紫外線が多くなっているだけに、若いからと安心はできない状況になっている。
治療となると、特効薬がないのが現状だけに、確実な治療として人気を呼んでいるのが「眼内レンズ挿入術」である。
これは局所麻酔で行われる顕微鏡下手術である。眼球の上部の角膜(黒眼)と結膜(白眼)の境界にそって2.5~3ミリ切開する。切開口から超音波ハンドピースのチップを入れて白濁した部分を乳化させて吸引する。
次に水晶体を包む膜の中に、インジェクターなどを使って、折り畳んだ眼内レンズを切開口から挿入する。折り畳んだ眼内レンズは中で元の大きさの直径6ミリに広がり、手術は終了。手術室に患者が入って出るまでの時間は、わずか50分程度である。そのため、日帰り手術を行う施設が多く、次いで多いのが2泊3日入院での手術である。高齢者の場合には手術や術後も不安という方が多いので、基本的には2泊3日が勧められている。
眼内レンズには技術革新がみられ、遠近ともに見える「多焦点眼内レンズ」が人気だ。これであれば眼鏡は不要だが、多少ピントは甘い。一方、「単焦点眼内レンズ」はピントを合わせた距離以外では眼鏡が必要になる。眼鏡をつくる人は眼の状態が落ちつく術後1~2カ月以降にすべきである。
食生活のワンポイント
加齢白内障の原因は酸化ストレスなので、若いときから活性酸素を除去する抗酸化物質を多く含んだ食材を積極的に摂取しておくべきである。その代表がビタミンA、C、E。だから、これを抗酸化物質の“ACE(エース)”と呼んでいる。
●ビタミンA・ベータカロチン――ビタミンAは抗酸化物質であるとともに、ロドプシンをつくる。網膜に像を結ぶのに働く細胞にはロドプシンが含まれて働いている。それをビタミンAとタンパク質とでつくっているのである。ビタミンAの多い食材は、鶏・豚・牛レバー、牛乳、卵など。体内でビタミンAに変化するベータカロチンは、焼きのり、パセリ、ホウレンソウ、ブロッコリー、トマト、人参、スイカ、シソ、カボチャ、パセリなど。
●ビタミンC――ビタミンCには、ビタミンEが壊れるとそれを修復する働きがある。それだけにより積極的に摂取してほしい。多く含まれているのは、ブロッコリー、ピーマン、ゴーヤ、レモン、イチゴ、トマト、大根、小松菜、温州みかん、キャベツ、キウイフルーツなど。
●ビタミンE――抗酸化トリオの中の中核である。アーモンド、ピーナツ、サラダ油、イワシ、卵、豆腐など。