“角界のプリンス”、昭和の名大関貴ノ花。引退後は息子2人を横綱に育て上げた二子山親方が、05年5月30日逝去した。55歳だった。

親方の生命を奪ったのは、「口腔底ガン」。

口の中にできる悪性腫瘍の総称が口腔ガンで、口腔底ガンは舌ガンなどとともにその中のひとつ。口腔底とは、舌の下、下顎の歯肉に囲まれた部分で、そこにガンができる。

口腔ガンは年間約3000人以上が発症し、その約10~15%が口腔底ガン患者である。男女比は10対1で圧倒的に男性が多い。

ガンの直径が2センチ以下でリンパ節に転移がない早期であれば、5年生存率は約90%と良好である。

治療法には手術、放射線療法、化学療法とあるが、歯肉などは放射線に弱く、そのため照射の仕方によっては骨髄炎を起こすこともあるため、治療の基本は手術となっている。最近では、前立腺ガンの治療でよく知られるようになった治療法の小線源療法(放射線を出すカプセルを埋め込む治療)が、ごく一部の医療機関で行われている。

口腔底ガンが進行した場合は、その周囲にある舌や下顎の一部を切除し、その後、舌などを再建する。リンパ節などに転移のある場合には抗ガン薬を使った化学療法になる。

もちろん、それだけではない。進行度に合わせて抗ガン薬に手術をプラスしたり、放射線療法に手術をプラスするなど、さまざまな組み合わせによる集学的治療が行われている。

その結果、口腔底ガンの全体の平均5年生存率は約60%になっている。

だが、なかには悪性度の極めて高い口腔底ガンもある。それは、組織の内側へ入っていく「内向型」のガンで、発見がおくれるばかりか、転移しやすく、発見したときにはすでに進行ガン、末期ガンというケースが多い。

そうなるのを防ぐためにも、口腔底ガンの症状を見逃してはならない。

口の中は、非常に繊細にできている。ごく短い髪の毛が入っただけでもすぐにわかる。だから、口内炎と思われるような口腔底ガンができると、すぐに気づく。その時点で口腔外科や耳鼻咽喉科を受診すると早期のうちに発見できる。

ところが、違和感を放置してしまう人がいまだに珍しくない。舌が動かしづらく、ろれつが回らなくなったり、食べ物が飲み込みにくくなってからでは、すでに進行ガンだ。

やはり、口内炎が2週間も治らないときは、すぐに専門医の診察を受けるべきである。

 

食生活のワンポイント

口腔底ガンの危険因子は、口の中のことだけに飲食に大きく関係する。以下の4点はリスクが高いので控えるべきだろう。

(1)喫煙
  (2)アルコール度数の高い酒
  (3)刺激の強い食べ物
  (4)極端に熱い飲食物

これらは食道ガンのリスクでもある。

口腔底ガンの人は食道ガンを併発するケースが多いので、十分に注意が必要だ。もちろん、その逆に食道ガンの人も口腔底ガンを併発することが多い。

リスクを減らしたうえで、以下の3点を実行するとよいと思われる。

(1)食べ物を口に入れたら最低30回は噛むようにする。
   よく噛むことによって、ガンを抑える物質が口の中に唾液とともに出てくるといわれているからだ。

(2)緑黄色野菜を十分に摂取する。
   特に緑、赤、黄、青、黒など色が濃く、色素パワーの得られるものがよりお勧め。

(3)食後はしっかり歯を磨き、口腔内を衛生的にしておく。