5年間かかって任天堂・岩田社長を口説き落とした

──どうやって岩田聡社長を口説き落としたのか。

【守安】任天堂は「スーパーマリオ」など有力なIP(知的財産)をいくつも保有している。最初はそのIPをお借りする形で、「ブラウザゲームをつくりませんか」という話をしにいった。それが10年のことだったが、「それは難しい」と断られた。しかし、その後も何かと機を見ては岩田社長と会う場をセッティングし続けた。

なかなかいい返事をもらえなかったが、我々はヤフーと共同で「ヤフーモバゲー」というゲームのプラットフォームをやっているといった話をしたときに興味を示された。他社と組んで、裏方に回るような、我々のある種の柔軟さを面白いと思っていただけたのではないか。

そのときに「モバゲーブランドにどれだけこだわりがあるか」と聞かれたが、ユーザーにとってプラスだったり、前面に出したほうが事業の成功の確度を高めるのであれば使うが、そうでなければこだわりはない、と話したことが響いたようだ。

──ゲーム、自動車のほか、ヘルスケア分野やキュレーションサイトの運営など、様々な事業に進出し、立ち上げスピードも速い。どういう意思決定で進めているのか。

【守安】数億円から数十億円を投資するような大きな事業は、経営会議や取締役会で議論をして意思決定をする。しかし、インターネットのサービスは、何がヒットするのかは机上で議論しているだけではわからない。たとえば、ツイッターも「140字以内の短文を投稿できるサービス」と聞かされただけでは世の中に受け入れられそうなイメージはまったくわかない。それほど投資額がかからないのであれば、面白そうなアイデアはとりあえず実行してみることにしている。これを社内では「パーミッションレス」と呼んでいるが、立場によって決裁できる金額が違う。およそ数千万円以内であれば、取締役会などの決裁は受けずに進められる。