日本の成長を支える中小企業
地方経済においてはどうでしょうか? 今後、人口減少等で需要が縮小すると言われる地方経済にとっては、地域活性化の切り札として観光資源があると思います。私も含め外国人の多くは、日本の食文化や温泉、自然などに、おそらく日本人の皆さんが思っている以上に関心があるのです。
インターネットを通じてリアルタイムで情報を入手できる時代ですが、海外にいて得られていた情報より、日本に来て見聞きした情報や実際に体験したことの方が外国人にとって魅力的な事が多いと感じます。日本はまだまだ海外に対して魅力を伝えきれていない印象です。
たとえば、地方に出張すると地元の社員、代理店さんからガイドブックには載っていないような特産物、景勝地を教わる機会があります。有名な観光資源がない地域であっても、食文化を中心に、日本での生活、農林漁村の体験などによって、外国人観光客を引きつけることも十分に可能と思います。
日本への外国人観光客は2014年に過去最高の1341万人に達したとのことですが、フランス、アメリカ、中国等に比べると少なく、観光収入においても欧米諸国と比較したら圧倒的に少ないのが現状です。一年間を通して楽しめる四季のうつろい、数々の文化遺産や自然遺産、若者向けにはANIME、MANGA、J-POPなど日本には誇れる観光資源があります。
また、オリンピック招致のスピーチにもありましたが、英誌エコノミストがまとめた世界50都市の安全度ランキングで、東京が世界一安全な都市に選ばれたとおり、日本は安全で安心して暮らすことができ、旅行ができる国だと思います。円安が追い風となって街には観光客が増えたと感じますが、2020年に向け外国人観光客数はもっと大幅に増えていくであろうことから、環境を整えることで観光資源の有効活用がもっとできるのではないでしょうか。
こうした課題を一企業や一地域に課せられたものととらえず、競争力を持ち更なる発展をするために、企業、大学、地域の行政と言ったいわゆる「産学官」と金融機関及び支援機関が連携して解決に取り組む地域が見られるのも素晴らしい事だと思います。
目指すべき方向や取り組みに対する意識を共有し、それぞれの役割を果たしつつ連携して一丸となって地域産業の振興に取組む姿を見ると、日本の成長を支える原点がここにあるように思います。
サシン・N・シャー
1967年生まれ、米国出身。米国スティーブンス・インスティテュート・オブ・テクノロジー卒。99年メットライフ入社。2011年アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニーリージョナル専務執行役員、12年メットライフアリコ代表執行役専務最高執行責任者などを経て、現職。