高齢化社会に潜むリスクを考えよう

メットライフ生命保険 代表執行役 会長 社長 最高経営責任者  サシン・N・シャー氏

保険という仕事に携わっていると、リスクをいかに管理し、備えておくべきかを、人一倍考えているように思います。ビジネスにおいてはもちろんのこと、プライベートでも、起こりうるリスク、必ず起こるリスクを想定して、リスクが起こったときの回避策や軽減策を習慣的に考えているのです。これは一種の職業病のようなものかもしれませんが、これにより最悪な事態は避けられ、安心感が生まれ自信をもって前向きに行動することができています。

そんなことから、日常的なリスクだけではなく、10年後、20年後や50年後に備える事についても考えていることがあります。それは、日本の高齢化社会であり、それにともなう介護社会についてです。

日本の65歳以上の高齢者人口は、現在、約25%に達しています。海外でも「日本=高齢化社会」というイメージは強くもたれており、高齢化率がまだ13%程度のアメリカからすると驚きの対象です。病院で診察を待つ人の大半が高齢者だったという話をよく聞きますが、国民の4人に1人が高齢者なのですから、病院に行かずとも容易に想像できる話です。

日本では、今後も人口の減少、高齢者の増加により高齢化がさらに加速していくことから、各国からその対応については注目されており、効果的な備えが社会にも個人にも求められているのではないでしょうか。

これから迎えるさらなる高齢化社会に潜むリスクに対して、いかに備えるかを考える必要があると思います。日本人の平均寿命は、2013年に男性が初めて80歳を超え男女平均は84歳となり世界一の長寿国です。ちなみにアメリカは79歳ですが、日本では今後も、男女とも平均寿命は延びて、2060年には女性の平均寿命が90歳を超え人生における高齢期はさらに長くなります。高齢化率も約40%に達し2.5人に1人が高齢者という社会になると見込まれています。

高齢化社会においては、高齢者が安心して生活を送るために年金や医療、そして介護といった社会保障の充実が欠かせません。ところが、高齢期が長く、高齢化率も高くなると、社会保障による負担もさらに増大するわけです。少子化を解消するなど高齢化社会を支える現役世代の拡大が必要であり、社会全体で解決していくべき問題なのです。

その中でも、介護については年金や医療による問題とは少し様相が違います。認知症も含めいざ介護が必要となった場合、介護される人だけではなく、介護する人も当事者となり、家族を含む多くの人が当事者として介護に関わる可能性が高いということです。また、この当事者は高齢者と現役世代と言う組み合わせではなく、場合によっては介護される人も介護をする人も高齢者といったケースも高齢化社会では起こりうるのです。