ライバル社員と経営課題を議論
人材の育成では、「ソフトバンクアカデミア」もユニークだ。孫社長の後継者の発掘・育成を目的として2010年に開講した。300人の受講生うち、半分はグループ外の人間で占められている。外部からの受講生にはライバル会社の社員もいるというから驚く。
「300人のうち、社内から集まった精鋭が半分です。30代前半が中心ですが、今年入社した新人から役員クラスまで年齢は問いません。外部からの受講生は、約7割が経営者。この中には上場企業の社長もいます。そのほかには、官僚や政治家、医師など様々な職種の人が集まっています」(人材開発部・源田泰之部長)
内部の受講生は、いわば幹部候補だが、決して安泰ではない。講義の成績で毎年下位20%を落とし、新たに入れ替えている。講義は、ソフトバンクの直面する経営課題について、具体的な提案を求め、議論するという実践的なものだ。孫社長も自ら議論に参加する。
「アカデミアの中で頭角を現した人にふさわしいポジションを用意し、そこで実績を挙げて勝ち残り、後継者になるというのが道筋です。ですからアカデミアでの学びと経営現場への配置による育成はセット。20代の社員が経営戦略を担当するグループに抜擢されたり、グループ会社の役員に選ばれたりするケースもあります」(源田部長)
幹部養成のために独自のスクールを設ける企業は多い。だが、外部との本格的な競い合いはプログラムに組み込みづらく、また卒業後に幹部として抜擢するまでも時間がかかりがちだ。その点、アカデミアは講義そのものが外部人材との「他流試合」の場となっており、そこでの学びのレベルは非常に高い。さらに優秀な人材は、すぐに抜擢されるため、経営職としての「修羅場」の経験が、さらなる成長を促すことになる。果たして、その中から後継者が現れるのか。今後の成果に注目したい。