きっかけはスプリント買収
これは12年10月に発表された米国3位の携帯電話会社「スプリント・ネクステル」の買収にともない、13年1月に導入された。事業の海外展開の推進により、社員のグローバル化も支援する、というものだ。
社員は英語能力テスト「TOEIC(990点満点)」を半期に1回、無料で受験できる。このスコアに応じて、800点以上は30万円、900点以上は100万円が支給される。
期間は15年12月末までの3年間。この期間にスコアを上げた人だけでなく、以前から英語が得意な社員も支給の対象になる。ただし、期間内に800点に到達して30万円の支給を受けていると、その後に900点以上をとった場合の金額は差額の70万円となる。二重取りはできない。
対象者は国内主要グループ5社の約1万7000人。報奨金だけでなく、600点以上の社員には英会話スクールのマンツーマンレッスンやオンライン英会話、英語合宿などが提供され、スコア向上への後押しがある。
同社はスコア800点以上の社員を15年末までに3000人に増やす計画だ。現時点での到達者は約1000人。英語力のレベルに合わせた仕掛けをきめ細かく用意し、さらに高得点者に100万円というインセンティブを与えて英語力の向上を促すというのがソフトバンクのやり方だ。つまり、会社は本人の意欲をかきたてるための支援はするが、あくまでも本人の自主性、能動性を尊重する。
一方、「英語公用語化」を掲げ、半ば強制的に学習させる企業もある。そのほうが短期的には社員の英語力は上達するだろうが、仕事と英語習得の二重の負担がストレスを増し、日常業務への支障や離職による社員の流出というリスクも発生しかねない。それに対してソフトバンクのやり方は、本人の成長意欲への働きかけを通じた自律型グローバル人材の育成を目指しており、その手法は興味深い。