男性部下に裸踊り命令、性体験数を聞く……

ひと口にセクハラといってもそれを判断するのは難しい。

一般的には相手の意に反する性的言動とされるが、それを職場で判断するのは管理職でもなければ会社でもない。女性が嫌だと思えばセクハラになる。

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男性上司から男性部下への主なセクハラ事例

セクハラに詳しい弁護士も「基本的には通常の女性の感じ方が判断の基準とされていますが、なかには普通以上に性的感受性の強い女性もいます。それでも本人が嫌だと言っている以上セクハラなのです。裁判でも本人が不快だと感じる基準がベースとなる本人基準説に立っているケースが多い」と指摘する。

そうであれば触らぬ(言わぬ)神に祟りなしだ。すでに企業では就業規則にセクハラ規程を盛り込んでいるところも多い。男女雇用機会均等法にセクハラ条項(第11条)が盛り込まれて以降、社員への周知や研修を繰り返してきた。

企業の研修で使われる『セクハラ防止ガイドブック』(日本経団連出版)によると、レッドカードの事例として「繰り返し性的な電話をかけたり、電子メールを送ったりする」「接待においてお酒の酌やデュエットを強要する」ことを挙げている。

またイエローカードの事例では「女性のみ『ちゃん』づけで呼んだり、『女の子』と呼ぶ」「個人的な性的体験談を話したり、聞いたりする」「任意参加の会合で上司の隣に座ることやお酒の酌を要求する」「ある女性と他の女性の性的魅力について比較する」――なども挙げている。

おそらくこうした事例は周知されているはずだが、それでもセクハラ事犯は減少していない。厚労省の都道府県労働局雇用均等室に寄せられた男女雇用機会均等法に関連する相談件数のうちセクハラに関するものは9230件(43.1%)とダントツに多い。労働局長による紛争解決の援助申立受理件数502件のうち、セクハラが248件と最も多く、減る気配がない。

▼女性上司による女性部下へのセクハラも多い

じつはセクハラは男性が女性に、あるいは女性が男性に行う行為を禁じるだけではなく、同性であっても禁じられている。男女雇用機会均等法第11条に基づく「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」、いわゆるセクシャルハラスメント指針が2013年改正された。

新たに会社が講ずべき措置として「職場におけるセクシャルハラスメントには、女性労働者が女性労働者に対して行うもの及び男性労働者が男性労働者に対して行うものも含まれるものであることを明示する」ことになった。指針は2014年7月1日から適用されている。

たとえば、新入社員の男性新人に対して、宴席で「裸踊りをしろ」といった一発芸を強要するとか、下ネタ話を無理矢理聞かせる、性体験を執拗に尋ねる行為は明らかにセクハラとなる。

もちろん、女性上司も同じだ。女性の部下に「あなた、なぜ結婚しないの」、「胸の大きさや男性経験を詮索する」「男性関係がだらしないとうわさを流す」――といった行為はセクハラとなる。

すでに社内規定に盛り込まれているはずであり、社員が申告すれば処罰の対象になるかもしれない。

花見酒だ、歓迎会だと浮かれて、とんだ失態を演じないようにくれぐれも注意したい。

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