「でも、ただ歩いてもつまらないので、まだ売れていない吉本興業の若手芸人が案内すれば、歩く人も喜ぶし、彼らにとってもいい舞台になる。カップルで来るお客さんも多いので、キューピットのビリケンを置き、愛の鐘を鳴らすようにしました。別途1300円を頂戴しても皆さん大満足でした」
ここでもひとひねりが生かされていたわけだが、こうしたフラッシュアイデアを次々に生み出す秘訣は「とにかく通天閣を好きになること」だと西上社長は話す。それゆえ自分自身はもちろん、社員たちにも「通天閣を好きになれ、会社を好きになれ、そして仕事を好きになれ!」と励ましている。
そんな西上社長は1年のうち350日は通天閣に上る。正確には出社する。地方出張の後などに立ち寄ることを含めてとはいえ、ほぼ毎日といっていい。そうやって「自分の大好きな通天閣を皆さんにも好きになってほしい」と思い続けるなかで、フラッシュアイデアが続々と浮かんでくるのだ。
全日本タワー協会に加盟しているタワーは20ある。なかでも圧倒的な認知度を誇るのは、東京スカイツリー、東京タワー、そして通天閣。この誰もが知っているネームバリューは貴重な財産で、100年にわたって培われた“暖簾”にほかならない。西上社長はこれからも、破天荒な発想で魅力を発信し続けていくはずだ。
(熊谷武二=撮影)