スカイウォークにもビリケンが鎮座

さらに、西上社長は通天閣がある新世界が、昔から映画の街でもあることから閃きを得て、往年の娯楽映画の看板を模した館内案内板もつくった。チケット売り場の上には、石原裕次郎主演の「嵐を呼ぶ男」をもじって「チケットを売る男」が、トイレの入り口には勝新太郎の顔とともに「座頭市」ならぬ「便所位置」が掲示されている。

そうした飽くなきひとひねりが、来場者を喜ばせるのだ。よく「神は細部に宿る」といわれるが、来場者が「おや?」「まあ」「へぇー」と思うからこそ、満足してもらえる。だから、いまでは600円の入場料に対する不満の声を聞くことはない。ただし、西上社長はアイデアがヒットし続けることの難しさも認識している。

「千に三つとまではいいませんが、うまくお客さんの心を掴んだとしても、間もなく陳腐化してしまう。飽きずに2度、3度と通天閣に来てもらうには、展示やイベントのリニューアルを、早ければ1年、遅くとも3年で行う必要があります。その間もマイナーチェンジは何度でも繰り返します」

それには西上社長のフラッシュアイデアだけだと限界があるため、社員をはじめ人の意見を聞くことを大切にする。その代表例が昨年の9月まで行っていた「通天閣スカイウォーク」だ。

4階展望台の下には「喉仏」と呼ばれ、メンテナンスなどに使われる突き出した部分がある。地上75メートルの位置にあり、足元が網状のため、真下がはっきりと見える。知り合いの会社の人から「ここを歩けたらスリルのあるアトラクションになる」と提案され、2年ほど続けた。最初は「危ない」という意見も出たが、西上社長は「やってみなはれ」の精神で実現させた。