その成果の一つが、100周年事業として2012年4月に全面改装された5階展望台だ。エレベーターを降りると、壁一面が金色、床は赤一色で統一されている。大阪といえば豊臣秀吉。派手好きな秀吉がつくった「黄金の茶室」のイメージを再現して話題になった。

関東の人間が見たら、これだけでもコテコテ感が目いっぱいという感じだが、西上社長は満足しない。さらなる演出を繰り出していく。実は、その際に大切にしているのが、アイデアに“ひとひねり”加えることなのだ。

この展望台には、米国生まれの神様で通天閣を支えてきた「ビリケン」の3代目が鎮座している。米国生まれらしく髪の毛は金髪で、さらに黄金の茶室に合わせて全身も金色。格好の被写体で、ビリケンの前は一緒に記念写真を撮ろうとするファンでいっぱいだ。

「このビリケンさんのなかには、小さなビリケンさんも入っています。仏教でいう胎内仏で、年に3回御開帳をするんです。ほかにも、通天閣を“パワースポット”にしようと、ビリケンさんと七福神を足した『八福神めぐり』も仕掛けました。七福神もビリケンさんの顔をしています。展望台に上った人は、御朱印帳を手に八角形の展望台を一周してもらいます」


フラッシュアイデアで生まれた企画が大勢のお客を魅了する 
(1)大黒様の姿をしたビリケン。(2)子どもに大人気の3代目ビリケン。(3)金の茶室を模した展望台は人でいっぱい。(4)秀吉の黄大阪のシンボルタワーでもある通天閣。

通天閣に行き「これでどないや」と問われたら、誰もが「もう満足です」と口をついて出てきそうなアミューズメントゾーンとなっている。そこで、西上社長に発想の源を尋ねと「フラッシュアイデアですわ」と一言。要は“思いつき”なのだ。自分が「おもろい」と思ったらどんどん実行していく。

足の裏を触ると「なんでも願いごと聞きまっせ」とか「もうかりまっか、ボチボチいきなはれ」と大阪弁をしゃべるビリケンもいて、子どもたちは大喜び。また箱を振って棒を引くのではなく、ルーレットを回して番号を選ぶアメリカンスタイルのおみくじに挑戦すると、当たったのは「大吉」ならぬ「ミラクルラッキー」だったりする。これらもすべて西上社長のフラッシュアイデアの賜物なのだ。