3社共同運行に積極的ではないANA

西久保はANAが資本提携を前提とした共同運航を求めていると考えていたのでANAの参入には難色を示していたが。西久保はしぶしぶ昨年の12月15日、ANAを交えた3社交渉をスタートすることを決断した。ところが3社交渉がなかなか進まない。

「ANAにとってJALと共同での支援ではまったくうまみがないからです」(航空業界に詳しいジャーナリスト)

ANAは以前から新興航空会社を囲い込み、JAL包囲網を構築している。

すでに羽田-千歳を運航しているエアドゥや羽田-福岡運行しているスターフライヤー、羽田-宮崎のスカイネットアジアなど主だった新興航空会社には出資や役員派遣、コードシェア(一つの航空便に複数の航空会社の便名を付与して運航すること)を進めている。JAL囲い込みというのはいったいどのようなものなのか。

航空会社が乗客を増やしていくためにはライバルとの価格競争で勝たなければならない。しかしJALやANAなど大手航空会社が新興航空会社よりも料金を下げると、新興航空会社の経営は行き詰ってしまう。だから国交省は大手航空会社は新興航空会社の競争環境を圧迫しないよう監督している。JALの会社更生法適用が決まった当時、JALへの規制はさらに厳しくなったという。運賃の値下げ競争となれば、会社更生法で負債などが一掃されたJALの方が圧倒的に有利だからだ。

「JALは更生会社であるから新興航空会社はもとより、ANAよりも料金を下げてはならないと国土交通省が通達してきました」(アナリスト)という。いわゆる「いたずら通達」(いたずらにJALは料金をさげてはいけないという意味の通達)だ。JALが再生し、再上場したことで、この「いたずら通達」はなくなった。

「そこでANAはJALが値下げをしようとすると、息のかかった新興航空会社に反対の声を上げさせ、JALの価格戦略を阻止してきた」(アナリスト)

ANAはスカイマークを取り込めば、JAL包囲網が完成する。JALとの共同運航では囲い込みにはならない。3社共同でやるなら、スカイマークが破たんし、JAL、ANAに再配分される羽田発着枠をもらった方がいい。

「国交省は14年3月、羽田空港の発着枠便についてはANAに11便に対して日航に5便と傾斜配分され、今期の大幅収益増につながっている。仮にスカイマークが破たんし、発着枠がJAL、ANAに配分されれば、また傾斜配分になるでしょう。だから3社共同でやるなら、むしろ破たんし、発着枠を分けてもらった方がANAにはメリットが大きい。仮に発着枠は新興航空会社枠だということになってもスカイマーク以外はANAの影響下にある会社。だからANAは3社の共同運航には積極的ではなかったのではないか」(アナリスト)