価格交渉が1回でまとまらず、「上司と相談してみます」「社内の稟議にかけます」といったように後日に持ち越しということもよくある。しかし、ここで「わかりました。後は皆さまでご検討ください」といって帰ってしまうのはペケ。ここで必ずやっておくべきこととして「ゾンビ退治」があると吉野さんはいう。「映画のゾンビは夜になると起き出して人間を襲い始めます。同じように、価格の提示を受けた相手の頭のなかには一晩寝ている間に『もしかして、ほかにもいい商品があるのでは』『もう少し安くならないか』という懸念が生まれてきます。それを退治しておくために、ステップ2(http://president.jp/articles/-/13822)の成功事例の提示をもう一度、違った内容の事例で2つ行っておきます。そうすると、相手も安心して社内での稟議に回せるようになります」
では、価格でどうしても折り合わない場合はどうしたらいいのか。そうしたケースでECサイト「ロコンド」代表取締役の田中裕輔さんがお勧めするのが、価格以外の「レバー」を用意しておくことだ。
「『値段を下げてくれ』『これ以上は無理です』という堂々巡りのキャッチボールになっては意味がありません。そこで、支払い時期の変更や商品の内容の変更など価格以外の項目で交渉の余地を探っていきます。その項目のことをコンサルティングの世界では『レバー』と呼んでいます。複数のレバーを動かしながらロボットを操作するように、事前に交渉のためのレバーをいくつか用意して、話を前に進められるようにするわけです」
レバーを準備するには、交渉相手のことをよく理解したうえで、自分がこのような手を打ったら、相手がどのように出てくるか、将棋の先読みのようにシミュレーションをしておく必要がある。ちなみに田中さんは常に三手先まで読むようにしているそうだ。さらに、そうした交渉項目について上司とのコンセンサスをとっておけば、「社に持ち帰って検討したうえで回答」ということがなくなり、スムーズに交渉が進むようになること請け合いだ。
【○】最後に私どものお客さまのことをお話しさせてください。
【×】失礼します。後は皆さまでご検討ください。
吉野真由美
同志社大学卒業後、生命保険会社などを経て英語教育会社に入社。12年間連続でセールス上位入賞。2005年、プレゼン話し方研究所を設立し現職に就任。
田中裕輔
2003年、一橋大学卒業後にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年1月、株式会社ジェイド(靴の通販サイト ロコンド.jp)の創業に参画。同年2月から現職。著書に『なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?』がある。
マンジョット・ベディ
1969年、インド生まれ。17歳のときに来日。2006年、1st Avenue設立。クリエイティブ・ディレクターとして多方面で活躍している。