「自己の没入」が心に刺さる
文字だけで見るなら「辛辣な言葉ばかり並んでいる」と感じるかもしれない。ところが、その語り口からラリー氏の強い思いが感じられ、嫌な後味は残らない。ときにひとりの顔を覗き込むかのように語りかけ、ときに芝居がかった風に大げさに間をとり主張する。そして聞き手に意志を伝達し、真っ直ぐに心や頭に突き刺さるように、語りかける。それが、聴衆の心を動かす力になっているのだ。
たとえば、ひとりの顧客に対して語るときでも、10人のミーティングや大勢の前でプレゼンをするときでも、雑談をしているときと同じように、誰かに話しかけるようにまっすぐ率直に、でもいつもより少しだけパワーをあげて大振りに話すことで効果があがるだろう。
以前、人前で目を見ると緊張するなら、会場内の3カ所ほどに、自分に好意的な人を見つけて順番にみていけば、会場中を見渡しているように見えるとお伝えした。でも「誰かに話しかける」ときは、逆に自分の話にあまり注意を払っていない人を数カ所見つけると、話しかけやすいかもしれない。その人と対話をするかのように話すことでより自然になり、誰かひとりに向かう力から直接的な印象を与えるようになるからだ。
そして原稿など読まずに、集まった友達に話しかけるようなつもりで、語りかけること。これだけでずいぶんと話が自然になり、単調さがなくなり、リラックスした会話のような訴えになるものだ。
ラリー氏の成功論と同じように、話を伝えるために必要なのも「情熱」だ。テクニックにこだわるよりも「話の中に自分を没入させる」ことを念頭におき、どんなに辛辣な主張でも、必ず聞き手への「愛情を持って語りかける」こと。これで、会話のような新鮮さとのびやかさで自分の思いが伝えられ、聞き手もあなたの話に没頭してくれることだろう。
[脚注・参考資料]
TED : Larry Smith, Why you will fail to have a great career, Filmed Nov 2011
http://www.ted.com/talks/larry_smith_why_you_will_fail_to_have_a_great_career